2018.01.30
イラストレーターが彩る、本と食べ物の世界
Minoru(イラストレーター)
これまで装画(本の表紙等で起用されているイラスト)を中心に、CDジャケットや商業施設のポスター等のイラストを数多く手掛けてきた、イラストレーターのMinoru。彼女の描く作品の数々は和風なテイストを擁し、平面ながらとても奥行きを感じさせるものばかりだ。
仕事上、上述のテイストが好まれ、実際の制作リクエストにも多い彼女だが、今回、LUCKAND-Gallery Cafe&Bar-にて、2/6〜2/18まで開かれる『Minoru作品展「はちみつ峠の食卓」』では、自身が今後力を入れていきたいと所望していた「食べ物」にまつわるイラストの新作が多数展示される。Minoruの描くファンタジーさも交えた、ほっこりする温かいタッチの食べ物のイラストと、そのどこかに彼女の生みだした妖怪「ちみ」が見え隠れしている画図は想像するだけでも実に興味深い。
そんな彼女が、イラストレーターとしてのこれまで~現在~今後を、個展への意気込みも含め熱量たっぷりに語ってくれた。
「セオリーを一度、全部崩してから再構成していく感覚の養いが、自身の素養になった」
—Minoruさんは、いつ頃からイラストレーターを目指し始めたのですか?
Minoru
元々物心つく頃から絵を描くのが好きな子どもではあったんです。それこそ小さい頃は漫画家になりたくて、一生懸命描いてました。ところが、高校の頃に一度、絵を描くのを止めたんです。
—それには何か理由でも?
Minoru
スポーツが盛んな高校だったこともあり、私も空手部に入って「絵を描くのはもういいかな……」なんて思っていた時期もあったんです。だけど、大学受験に向かう際に、普通に大学に行くのもつまらないなと思い始めて。そこから再び絵を描き出し、大学も美術大学に入ったんです。「絵やデザインに関わる仕事がいいかも……」と、そこではデザイン学科を選びました。
—実際に大学に入学されていかがでした?
Minoru
大学受験の際はデッサンや色彩構成等、わりと硬めの授業だったんですが、大学は違いましたね。それこそ授業も手さぐりで。例えば、紙パレットに自分の好きな色を様々に出し、それを一度たたんで、再び開き、混ざり合った部分を芋判みたいなもので色をとって、それを紙にスタンプしていったり。セオリーを一度、全部崩してから色々と再度作っていく。そんな感覚的な部分を養う授業が多かったんです。それは後に凄く自分の素養になりましたね。でも4年生のころはデザインの授業等がちょっと嫌いになってきてまして。
—嫌いになったのには、何か理由でも?
Minoru
どうしてだったのかな……(笑)? デザインって、ロゴとかフォントとかけっこう細かな数値で配置していくじゃないですか。あとは、キチンと着地点が明確にあって、それに向かって作業しないといけなかったり。そこの着地点に向かう際にも、イメージや理由、論理等も必要になっていって。「どうしてここはこうなの?」と訊ねられた時に、キチンと答えられないといけない、みたいな。そんな授業を受けていたら、「ああ、私にはデザイナーは難しいわ……」となっちゃって。もっと感覚的に進められる仕事に就きたくなったんです。その辺りからですね、イラストレーターを職業にしようと思い始めたのは。
—その美術系の大学を卒業したあと、どこか会社にお勤めになったりは?
Minoru
してないんです。最初からフリーランスでした。
—それは凄い! 思い切りましたね。
Minoru
とは言え、それは無軌道で進んだのではなく。一応、大学時代に自分でも「それで食べていけるのか?」を見極めようと、「4年生の時に何かしらの仕事がこなければ、可能性はないから諦めてどこか会社に入ろう」と思って活動をしていました。
—今もこうしてフリーでお仕事をされているということは、その際にキチンとイラストレーターとしての仕事があったということですね?
Minoru
大学4年の時にCDジャケットや年賀状のイラストのお仕事がチラホラきだしたんです。そこで卒業してからも、商業施設のビジュアルやCDジャケットとか、ぼつぼついい感じで仕事が来るようになって。バイトをしなくてもなんやかんやで行けるなって。
—ちなみに、仕事がき出すまでに、どのようなアクションをとられたんですか?
Minoru
SNSですね。Twitterやボートフォリオサイトとか。そこに制作したものを次々とアップしていって。「それらを見て……」と、連絡が来るようになったんです。当初はそれこそ、インターネットで私の作品を見てのお声掛けばかりでした。
—Minoruさんの場合は、どのような流れで一枚の絵を完成させているんですか?
Minoru
私の場合は、線をまずアナログで描いて、それをスキャンしてPCに取り込んでデジタルで着彩しています。
—Minoruさんの絵が持つ和のテイストはどこからインスピレーションを得ているのですか?
Minoru
浮世絵はむちゃくちゃ好きです。歌川国芳や葛飾北斎等々、そこから色使いや色々な影響を受けています。
—私も浮世絵が凄く好きで。遊郭の絵や伊藤若冲とかも凄く好きなんです。
Minoru
私も若冲は学生の頃から好きで。彼は今でいうデザインっぽい作品も多いですもんね。
—それから、Minoruさんの画中による出てくる柄(がら)にも興味があります。あれらも和風ですよね?
Minoru
そうですね。あれは私のオリジナルの柄ばかりなんです。和柄を使うときにウェブでの無償の素材やフリーの素材集等から作品に落とし込むようなケースも少なくないようですが、それだと柄カブりしますよね。実際、昔の浮世絵師の方々は、柄も一つ一つ手描きだっただろうし。なので私の場合も、柄は自分のオリジナルで描いてます。やはり自分ならではのオリジナリティを出したいですからね。なので、普段から色々と柄を描いては、それをストックしています(笑)。
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