2018.08.21

福井伸実 個展「あの夕日は何色だった?」

福井伸実(恋する絵描き)

イラストレーターから芸術家として歩みはじめた「恋する絵描き」こと福井伸実が、外苑前Morgenrotにて1年ぶりに個展「あの夕日は何色だった?」を開催。「自分と絵と鑑賞者の関係」をテーマに、第三者を意識して制作された新作が並ぶ本展の様子をレポートする。

福井伸実 個展「あの夕日は何色だった?」
■日時:2018年8月1日(水)~2018年8月12日(日)
■場所:外苑前Morgenrot

元々水彩やペン画で淡い色感の印象が強かった福井伸実。だが、ちょうど一年前に同会場で開催した個展「いつかみた幻とくちづけ」では、自身のルーツである油彩の作品を多く創作。同年秋には、LUCKAND-Gallery Cafe&Bar-で原画展「また日の目を見る」を開催し、ゲスの極み乙女。、さめざめ、アルカラなどこれまで手がけたアートワーク原画を展示するとともに、水彩やペン画中心だった過去作を油彩で描き直すことで、イラストレーターから芸術家への過渡期を表現していた。今回の個展「あの夕日は何色だった?」では、そんな彼女がひとりの芸術家として挑んだ展示となった。

昨年と同じく、今回の個展も油絵で描かれた新作が多数並んでいた。「自分を投影しやすい」という理由から、これまで同様にほとんどが少女をモチーフにした作品だ。ただ、去年までは「自分がどういう絵を描きたいか、自分にとって絵とは何なのか」をテーマにしていたが、今回は「自分と絵と鑑賞者の関係」が大きなテーマだったという。

そのテーマについて彼女は、

「何かをみたときの感情は共有できない。だけど、それでいいと思っています。例えば私がこの少女の作品を、自分のコンプレックスをテーマに描いていたとしても、これを見た人はその少女が自分の姪っ子を彷彿とさせて愛おしさを感じるかもしれない。そういう、鑑賞者の気持ちが乗って初めて、作品は完成するんだと思います」

と話してくれた。以前までは自分の中だけで完結させていた作品たちだが、今回は第三者を意識して絵に余白を与えることで、鑑賞者の中で完結するような作品となっていた。

油彩のほかにも、これまでに描き溜められたポストカードサイズの作品が大量に貼り出されていたり、鏡や木箱、木製のお守りなどの立体作品も展示されていた。iPhoneケース、トートバッグなどのイラストもすべて直接描かれており、絵具の重なりや筆の息遣いなど、印刷では味わえないリアルさを感じることができる。どれもすべて世界にひとつしかない1点もの、というのも特別感がある。学生でも手が届きやすい価格設定で、日常でも使えるiPhoneケースは特に人気だったようだ。

なお、展示会場にはドローイングスペースがあり、実際に彼女が作品を描いている姿を見ることもできた。

展示が始まる前、彼女は自身のブログで「自分勝手にあなたの思いを、重いくらい乗せて鑑賞して欲しい」と言っていた。芸術や油彩といった言葉に少しハードルを感じる人も、彼女がそういう作品の見方を示してくれることで、もっと気軽に芸術作品を楽しむことができるだろう。彼女の描く少女たちにあなたが何を思うか、ぜひ次の機会に実際に足を運んで感じてみてほしい。

TEXT&PHOTO:LUCKAND

福井伸実

11月28日 逆子の未熟児生まれ
ギリギリ北海道生まれの東京都育ちで吉祥寺在住
武蔵野美術大学 造形学部油絵学科油絵専攻卒業

恋する絵描き。
絵を描いています。イラストも描いています。

音楽系アーティストのCDジャケットや歌詞カード等一式のアートワークデザインをはじめ、ノベルティやライブツアーのグッズ、ポスターなどのイラストからデザインまで一人で制作。
自身でも展示を開催、グッズ制作展開、トークやライブペイントのイベント開催など多岐に渡った活動を続けている。

http://fukuinobumi.jp/

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