2018.05.02

ストーリーが紡ぐアートワークと音楽の親和

小磯竜也(画家、アートディレクター)x 永原真夏(ミュージシャン)

NYLON JAPANにて木村カエラ連載のアートディレクション、Yogee New WavesのツアーTシャツ、永原真夏や大比良瑞希らのCDジャケットを手掛けるなど、様々な媒体でビジュアル制作を行う小磯竜也。今回、共に仕事をしたSEBASTIAN Xのボーカルであり、ピアノユニット音沙汰、更に2015年よりソロ活動を始動したアーティスト・永原真夏との対談により、出会いや互いの印象、そして共にモノづくりをする立場として、どのように永原のアートワーク制作を進めていったのかを伺ってみた。更に小磯が自身の絵画を使ってデザインしたポスター・CDジャケットなどの印刷物を原画と並べて展示する作品展「Printed by the Soul」についても語ってもらった。

「単発ではその良さが伝わらないし、そこにひとつのストーリーが欲しかったんです」(永原)

ー「アポロ」(2017年12月発売・4th EP『HAPPY GO LUCKY』収録曲)のMVがお二人の初仕事ですか?

小磯

そうです。ライダースジャケットに僕が絵を描かせて頂きました。

永原

以前から小磯さんのデザインは好きだったんですが、共通の友人が企画したサマーバーゲンに小磯さんも私も出店して、そこで初めてお会いすることが出来ました。フルアルバムまで順を追って制作する方が、アートワークと音楽にもより親和性が出て来ると考えたので、流れを説明してリリースが決まったタイミングで正式にオファーさせて頂きました。一回デザインをお願いしておしまい、というような単発のお仕事の関係ではその良さが伝わらないし、そこにひとつのストーリーが欲しかったんです。そういえば打合せの前に「とりあえず会ってみますか?」という感じで一度会いましたよね。6時間喋って(笑)。

 

ー6時間ってすごいですね(笑)。

小磯

すごいですね(笑)。僕は高田渡ファンになったあたりから言葉の世界に興味が出はじめて、その流れでネイティブ・アメリカンの思想が好きになって、という話になりましたね。真夏さんとは結構信じているものが共通していたので嬉しかったです。でもニューメキシコまで石を買いに行ったと聞いた時は完全に負けてると思ったけど(笑)。

永原

私がネイティブ・アメリカンへの憧れが強く、ターコイズを買いに本場ニューメキシコのサンタフェまで行ったんです。『GREAT HUNGRY』で付けているタイがそれです。

ーでも突然中山泰さんに会いに行く小磯さんも、ターコイズの為にニューメキシコまで行ってしまう永原さんも、良い意味で常識外れたエネルギーを持っている点がやはり共通しているように感じました。

永原

それはあるかもしれませんね。単純な感情を喋れる相手というのは、見つかりそうで意外と見つからなくて。でも小磯さんはそこへ対して深い考えや知識、広がりがあるので嬉しかったです。実際にお会いするまでは、とにかく小磯さんの描く絵の印象が強かったけど、お会いするとやはり「アーティスト」だと思いました。今日着ている服もご自分で描かれたんですよね?

小磯

(袖部分の絵をみながら)これはシルクスクリーンで刷りましたね。

永原

小磯さんは着るものも持つものも、これだけって限定しないんですよね。自分が生きていく範疇を自分で作っている姿にいつも憧れています。

小磯

真夏さんはリアリティがあって嘘がない。自身の音楽の中で言っている言葉と普段の本人に差がない感じがします。勿論歌っている時の声の張り方と話している時の声では違うけど、自分の想いや言葉を伝えようとする熱量は変わらない。だからやはり「歌の人」。ちょっと歌が上手いからヴォーカルやっていますっていうのとは違うんだよね。

ー『あそんでいきよう/フォルテシモ』と『GREAT HUNGRY』の制作について教えてください。

『あそんでいきよう/フォルテシモ』

『GREAT HUNGRY』

小磯

両方とも曲を聴きながら発想を膨らませたんですが、『あそんでいきよう/フォルテシモ』は一枚絵として完結させています。どうせデータにするから後でちょっと修正しようということは、あまりしたくなくて。そうすると元の絵は印刷用の為に描いた、ただの小道具のひとつになってしまうから。

永原

『GREAT HUNGRY』は、小磯さんがイメージをスケッチしてくれたのを写真に撮って送りました。バックインレイに描かれているパンケーキは、私が「こんなのも良いですよね」ってiPhoneで撮った写真を後から送ったら、絵にしてくれて。

小磯

ジャケットの肖像画は、僕が個人的に描いていた自画像を気に入ってくれたんですよね。それと参考資料として持っていったAvigdor Arikhaという画家の絵も。

永原

背景の感じが好きでした。

小磯

肖像画を縁取るオレンジ色に関しては、オレンジ以外の色が全てしっくりこなかったんですよね。大体、正解というものがあるんです。この絵に合う字の形とか、枠の色とか。今回のこのオレンジもそのひとつだったと思います。

ー永原さんから、デザインのイメージで要望は出されたんですか?

永原

歌詞のアイコンになるものを入れて欲しいという場合もありますが、それがなくても大切な部分を分かってくださっていれば良いので、基本的にはほとんどお任せでした。

小磯

真夏さんみたいに感覚的なことは珍しいですよ。でもその方が楽しいけど。

永原

本当ですか? それなら良いんだけど。

小磯

通常、依頼内容は詳細なことが多いから。その中でも音楽関係はまだ感覚的な要望もあるけど、やはり真夏さんは少し違うかな。ジャケットデザインって当然プロモーションツールのひとつなので、そのウエイトの高い人が結構いることも事実だし。僕は音楽が大好きだから、ビジュアルも含めてより良い作品に高めようと思って作るので、ただ「人目につきそう」「万人が手に取りやすそう」という観点だけでは作りたくない。勿論、結果的にそうなることは別として。でも真夏さんがビジュアルに求めているのは、もっとシンプル。シンプルなことの方が、最終的に目指していくものの本質に近いと思うから、一緒に仕事していて面白いです。僕のことも真夏さんのことも知らない人がジャケットを見て「あ、いいな」と直感的に手に取ってくれたら嬉しいですね。

永原

それは私も一番嬉しいです。

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