2018.02.28

アクリルの可能性を探究し続ける町工場

ヒトリエ「シンボルスマホリング」工場レポート

東京都内で二番目に町工場が多い足立区。そのある町工場で、バンド・ヒトリエのツアーグッズの一つ「シンボルスマホリング」は制作された。アクリルを材質に使ったこの逸品は、素材選定・型抜き・研磨・印刷、そしてパーツと合わさり届けられたもの。一見シンプルながら実は様々な工程を経て成されている。その製造過程を追うべく、LUCKAND公認リポーターのケイシに現場を訪ねてもらった。そこで働く社長や若き職人から話を訊くうちに垣間見れたのは、飽くなきアクリルの可能性を探究し続けている町工場の姿であった。

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「アクリルの現在と未来、その中での町工場の在り方とは」

1970年に設立されたこの会社は、現在の社長の祖父が創業したそうです。当初はアクリルの名札彫りをメインに、その後は時代のニーズに合わせ、1990年代初頭には身に着けるアクセサリー類、2000年からは携帯電話周りのアクセサリー、近年はロゴの型抜きをしたキーホルダーなどに主力を移らせながらも、一貫してアクリルという材質にこだわり、今日まできています。今回は、元々キックボクサーだったという、就いて3年目の若き小沢社長にも色々と話を訊いてみました。

━まずは、このキックボクサーから、この仕事に転身されたキッカケを教えて下さい。

社長

私がこの会社に入った時には、まだキックボクシングは続けてました。その頃は当社も、まだ家内工業的なレベルでして。家族や親類、縁者+職人さん1~2名でやっていたんです。正直、最初は「継ぎたい」との気持ちはありませんでしたね。他の仕事も経験して、20歳の時に、この会社に入る決意をしたんです。

━この会社のこだわりを教えて下さい。

社長

社風ですかね。「笑顔と元気」が、それなんですが。昔は職人気質で「モノを作るのが仕事」って感じだったものが、僕が入った2000年前半辺りから、工場もサービス業としてお客様を迎え入れるようにしていきました。

━確かに、ショールームがあったり商品の販売をしていたりと、「魅せる」営業スタイルですよね。魅せることでの興味が湧き、「ここで作りたい!」と、思わせるものがあります。

工場内ではオリジナルアイテムも販売している

社長

ありがとうございます。まさに<人が集まる工場>を目指しているので。魅せ方や、来られた方が気持ち良く見ることが出来る環境づくりは意識しています。一度でも来られた方が「またここに来たい」「ここに仕事を出したい」そう思っていただけるのが理想なんです。

━御社のアクリルを前面に押し出したブランディングにも特徴性を感じました。

社長

その辺りはお客さんに育てていただいた部分が大きいです。我々の志として「アクリル世界一になりたい」というものを掲げていて。それも数ではなく、我々でしか出来ないことで世界一になりたいんです。それをお客さんにも言ってもらえる。発信してもらえる。そんな会社が理想です。その為にもサービスやお客様の立場になって製造や提案を心掛けてますね。

━若い方が多く働かれているのにも驚きました。

社長

それは、我々の商品のターゲットが女性に多いというのにも関係しているでしよう。あとは、このアクリルの素材に興味を持つ方も、やはり若い子たちが多いし。今は逆に、ここで働きたいという若者が増えました。

━やはり若い方からの提案は御社にとって財産ですか?

社長

財産ですね。基本、我々は受ける仕事が中心なんです。そんな中でも、自分たちが作ったオリジナルなものをお客さんに提案したい気持ちは常に持っていて。なので、提案はけっこう自由にやってもらってます。そこを通して、お客さんともコミュニケーションが生まれたりしますし。それもあって、空いた時間があれば、スタッフには創作用に機械を貸し出してます。

━ヒトリエの「シンボルスマホリング」を見ても、依頼されたものを100%ではなく、120%で返すバイタリティを感じます。

社長

レスポンスの速さは意識しています。可能であれば、なるべくお客さんと顔を合わせて話をしながら、一緒のゴールを目指していく。その心がけは大切にしています。

━先ほどの「アクリルの世界一」を掲げるにあたり、何をしなくてはならないとお思いですか?

社長

この技術をずっと継承していくことですね。そのためにも今の若い社員が安心して働ける場所を残したいです。でないと職人さんも居なくり、この業界もすたれていってしまいますからね。

━その為の一環として何か取り組んだりは?

社長

町ぐるみの発展に力を入れています。実は、この足立区は東京都で2番目に工場が多い町でもあって。しかも、家族でやっているような小規模な町工場が多いんです。それもあり、1社で全てを完結させるというよりは、色々な仲間と共に創っていく方が向いていて。現在はそういった工場が集まって、「足立ブランド」と銘打ち、展示会に出たりして、外への発信を積極的に行っています。この足立ブランドは、東大阪と提携的なお付き合いをさせてもらっており、情報交換も積極的に行ってます。

━未来の職人予備軍に伝えたいメッセージがあれば、お願いいたします。

社長

僕らの世界は、けっして華やかではなく、どちらかといえば裏方な仕事です。だけどそんな中でも、自分が提案したものや作ったものでお客さんに喜んでいただけたり、街中で自分が作ったものを見た時の感動は格別です。その辺りを喜びや生きがい、励みに感じてもらい、職種を全うしてもらいたいです。あと、モノづくりに興味があるのであれば、とりあえずはどんな業種でも良いので一度やってみた方がいいです。

愛用品

「Apple Watch用のアクリル製バングル」

もうこれはしているだけで、みなさん見てくれるし、興味を持っていただけることが多いんで、最大の営業ツールですね(笑)。バングルはうちの職人が作ってくれました。横からスライド式に脱着や着せ替えが可能で。とは言え、手作業なので量産ができないんです……。

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