2017.11.05

用と美の両立の様式から解放され得た創造性

蓑輪朋和(金工作家)

新潟県燕市にて自作の創作作品の数々を産み出している金工作家・蓑輪朋和。彼の作り出す金属による作品群は、不思議なノスタルジーと、今にも動き出しそうなお茶目さやポップさを擁したものが多い。BURGER NUDSの最新作『Act 2 或いは Act 3』のジャケット内外にも多数掲載されている彼の作品類。実は当人は別項の玉川堂の職人でもある。伝統芸術と創造近代芸術…一見、相反して映る2つだが、彼の場合は、それらを有機的に結びつけ、あの独特の作風に繋がっているように思えてならない。その辺りの疑問を中心に、彼のここまでの経緯と想像の源、伝統と創造の両立や相互についてを訊いた。

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平らな板を打ち起こして、立体物にしていく、そこに魅せられ、金工の道へ

金工作家の蓑輪朋和(以下、蓑輪)

━高校では建築科だったとお聞きしました。そこから何故、現在の金属工芸の道へ?

蓑輪

元々立体物に関心があり、建築の空間を作り出していくところに魅力を感じていました。大学は金属工芸の鍛金コースに進んだのですが、それも平らな板を打ち起こすことにより、立体になり、空間が生まれる。そこに魅せられてのことだったんです。

━様々な金属がある中、蓑輪さんの場合は、主に銅を使いオブジェ等を制作されていますが、なぜ銅を素材に?

蓑輪

銅の柔らかさや自由に形が作れるというその柔軟性に魅力を感じたからです。鉄よりも着色の幅もあるんですね。特に、玉川堂に入ってからは、それを実感しました。あと、銅は扱いにくい、まるで猫に例えられているところがありまして…。いわゆる工芸の世界では、鉄は犬、銅は猫などと言われているんですね。つまりこっちを直そうと叩いたら、反対側のバランスが悪くなってしまったり…。そういった制御しにくいところにも面白さや奥行きを感じました。例えば鍛金の世界では、「花瓶に始まり、花瓶に終わる」とも言われていて。

━それは?

蓑輪

花瓶って、とても形がシンプルじゃないですか。それから回転体であるが故に、どこから見ても対照じゃないといけないんです。それもあり、まずはみんな花瓶から作り始めるんです。そこから湯沸や水注のような持ち手があるものや口があるものに移っていくと。だけど最終的には、このような曲線美をどう上手く出せるか?に、再び辿り着くんです。

━本日も花瓶をご持参いただいていますが、これは?

蓑輪

これは私が作成したものなんですが、これは銅ではなくて真鍮製で。真鍮は銅よりも硬い金属で、そのぶん扱いにくさもあって。特にこの花瓶は「ツル首型」といって芯がブレやすいんです。あえてその素材でツル首を作ってやろうと挑んだのが、これなんです。


私にとっての創作は生活を越えたところにあるもの

━大学を卒業されてから、即、こちらの玉川堂へ?

蓑輪

いいえ。大学卒業後、まずは家電製品のモック(発売前の試作の模型)を作る会社に入りました。とは言え、内心は鍛金をやりたいと思っていて。そんな矢先、玉川堂の求人を知り、門を叩きました。この会社に入ってからは、就業時間後は作業場を借り、自分の作品を作らせてもらっています。

━思うに伝統芸術的なものと斬新なオブジェって、ある意味、両極の創造物じゃないですか。その両立はどのように成されているのですか?

蓑輪

そうですね……技術も材料も同じだけど、趣向がまるで違いますからね。しかし私は、あえてその両方を続け、それらの相互関係から何か新しいものやワクワクするものが生まれてくることを信じているんです。

━実際はいかがですか?

蓑輪

伝統工芸にしても、私の作る製品は、どこか私の好みやテイストが若干反映されているかもしれません。正直、まだキチンとは交り合ってはいませんが、この先もっと良い相互作用によって新しい製品が生まれてくると確信しています。

━逆に創作活動の方への伝統芸術の影響や技術はあるものですか?

蓑輪

存分にあります。これまでの作品も、きっとここで学んだ技術や感覚を経ないと出せなかったり、作れなかっただろうし、また違ったものになっていたでしょう。正直、創作的な部分でも、伝統工芸の世界ゆえに「工芸作品なんだから、どこかしら用の部分がないといけないんじゃないか……」と悩んだ時期もありました。例えば、オブジェなんだけど、花瓶の役割も持たせたりとか。しかし制作を重ねるうちに、今は自分の表現に用途は必要ない、と気づいたんです。そこからですね。製品は機能性や審美性を追求して、生活に根ざしたものを作ろう、オブジェは実用性を取っ払って、瞬間々々を表現していこう、と決めたのは。私にとっての創作は、生活を越えたところにあるものなんです。


オブジェに関しては、最初のインスピレーションを大事に作っている

━蓑輪さんの作品はどこかファニーでキュートなところが見受けられます。

蓑輪

製品に関しては、使い勝手が良くて、永く愛用して頂けるものという意思を持って作っています。逆に作品に関しては、思い浮かんだイメージをそのまま形にしたいと思っていて。最初のインスピレーションを大事に作っています。以前は、言葉とイメージがだいたい同時に浮かんだので、それをラフスケッチに描き留め、具体的な形に再現していましたが、この頃は、感覚的に手を動かす中で、形になったり、意味を帯びてくるものが多いです。

━よくオブジェに顔と思しきものが見受けられますが、こちらは?

蓑輪

ある時期から実感したことや大切にしていることを擬人化し始めました。最初は顔が無い作品やあえて頭の無い本体だけの作品も作っていたんです。それも胴体は花瓶になっていたりと。そのうち、制作を進める過程でテーマによって顔や表情もつきだしてきたんです。

━ちなみに一つの作品制作の所要時間は?

蓑輪

仕事量に比例しますが、1~2日で出来るものもあれば、3ヶ月から半年ぐらい要するものもあります。

━インスピレーションはどんな時に浮かんでくるのですか?

蓑輪

銅を叩いている作業中に浮かんで来たり、作っている最中に形が定まるものもあります。また、制作中に発見した新たな課題から形が見えてくることも多いです。


<NEXT>制作をし続けていくことで自分を肯定していきたい

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