Disc jacket designed by げみ
Designed by Miwako Suzuki

「サンドピクチャーをモルカル式に＜スノウピクチャー＞にしてはどうかと思ったのが始まりでした。」mol-74のジャケットイラストを手掛け続けてきたげみは、アイデアの起点についてそう語る。 これまでに積もった雪がまた形を変えて落ちていく。それは終わりではなく新たな始まりを意味する『▷ (Saisei)』のようなものだと。

今迄も武市和希(Vo,Gt,Key)が伝えたアルバムコンセプトやテーマ、想いを、げみの手により具現化してきた。しかしここまで黒を大胆にあしらった構図は未だかつてない。漆黒の背景の中心に丸く切り抜いた絵は、まるでスノードーム。曲を聴きすすめる毎にゆっくりと……しかし着実に変化を遂げるような不思議な感覚が頭の中に広がる。それこそが、げみの意識した部分なのだ。更にスノウピクチャーを丸くすることで、レコード盤を想像の一端に置くことも出来るし、中央の再生ボタンはアプリにも見える。音楽の新旧や音の経過を様々な形で味わえる見事な作品だ。

サポートを務めていた髙橋涼馬(Ba)が正式メンバーとして加入。新体制となったモルカルがテーマにしたのは「冬の夜」。憂いを含んだ凍てつく空気に似たモルカルサウンドは、やはり冬が似合う。ASIAN KUNG-FU GENERATIONなど邦楽ロックのルーツと、Sigur Rósのような北欧テイストを融合。その絶妙なバランスとオリジナリティを持つモルカルに新風が吹いた。耳に残ったのはやはりリード曲。印象的なボウイングとベースライン、乾いたバスドラのリズムはモルカルのリード曲としては珍しい。かと言って突飛なことをしているわけではない。例えば「▷▷ (夜行)」のセンシティブなリリックと武市の高声、「◁◁ (瞼)」のゆったりと優しく、煌めくようなギターリフなどはモルカルアイデンティティに溢れている。だが、やはり高橋が正式メンバーになったことは大きいだろう。曲の構築も、今までには殆どなかったセッションを取り入れている。モルカルの第二期と言っても過言ではないだろう。間も無く始まるリリースツアーではその変化にも是非注目したい。

mol-74 – ▷ (Saisei)【MV】

Director : ITTA

「hazel」のMVも手掛けた映像作家のITTAが今回テーマにしたのは「生命力を感じさせる風景」。さざ波、ステンドグラス、風に揺れる草…メインの演奏シーンにクロスした様々な映像は、まるで夢の中のように刹那的だが鮮明に記憶の奥深くへ焼きつく。楽曲のコンセプトである「夜明けへの再生」を、VJでも活躍するITTAらしい、感覚的な発想で表現した映像に仕上がっている。

TEXT ： 秋山 昌未