2017.03.23

音と絵の相関

青木昭信(Rega) x 木暮栄一(the band apart)

意外と知られていないが、ミュージシャンで絵も描く存在は、実は多い。インストバンドRegaのベーシスト、青木昭信はバンドのCDジャケットのみならず、作品も描き、個展も開催するほど、音楽以外のアウトプットとして絵画に向き合っている。一方、the band apartのドラマー、木暮栄一は、結成当初のスケーターやパンクカルチャーからくるD.I.Y.精神に影響を受け、アメリカのバンドと同じようにメンバーがアートワークを手がけることはごく自然だったという。アートに対して似て非なるスタンスを持つミュージシャンの彼らに、音楽とそれ以外の表現の関係性、両方の創作を続ける意味を訊いた。

「中古のレコード買って、中を見るのが好きですね。デザインをする上で、ジャケットなんでしょうね、俺が影響受けたのって」(木暮)

「自分のなんかいいな、が通用しないときもあるのがバンド。それがストレスになることもあるし、それを超えてくるような快感がその先にあるときもあるし、そこはだいぶ違う」(青木)

—お二人が自身のバンドのアートワークをやるようになったきっかけは?

木暮

バンド始めた時の、かっこいいバンドのあり方の一つとしてD.I.Y.っていうのがあって。Hi-STANDARDが自分たちでレーベルをやったり、ツアーを組んで、あんだけ売れてるのにちっちゃいライブハウスを回るとか、そういうちょっとしたインディーズ哲学みたいなのに影響を受けてたから。ハイスタのアートワークやってたHongolianっていう人は、もともとメンバーの友達みたいなもんじゃないですか?そういう身内でやるのがかっこいいなぁと思った時に、身内でできそうなやつっていうのが俺しかいなくて。全く知らないデザイナーに頼むんだったら、まず俺がやってみて、メンバーに見せて「どう?」「これはダメだね」ってなったら、その時点で考えればいいかなというところで始めた感じですね。

青木

僕も最初、4曲ぐらい入れたCD-Rをライブハウスで無料配布するってなって、その盤面に印刷する絵を描いたんですね。幼馴染みとバンドやってるんで、僕がずっと絵を描いてるのみんな知ってたから。それで作ったのをビクターの人が見て、そこからずっとジャケをやるようになった感じですね。

—デザインや絵に対する影響でいうと何が大きいですか?

木暮

あー、もう完全にペイヴメントのジャケットですね。ペイヴメントのジャケットとか、ビースティ・ボーイズのレーベル「グランド・ロイヤル」とか。アメリカも商業的なロックからインディペンデントなバンドに時代が変わって、手作りって感じのジャケットでアルバム出してて、「これだったら俺でも作れるじゃん」て思ったのが最初だったので。で、一番好きなバンドがペイヴメントとダイナソーJr.だったんで、そこらへんのアートワークにめちゃくちゃ影響受けましたね。

—青木さんはジャケットのためだけじゃなく絵を描いてるわけですよね?

青木

そうですね。僕はほぼ毎日やってます。帰って、飯食って、夜描いてます。で、最近、抽象画をやり始めていて、いいんですよ。なんとなくやって、次の日の朝見て、仕事行くみたいな(笑)。バンドは4人いるじゃないですか。一人で絵に向かってる時の方が空っぽになって、リフレッシュしますけど。

木暮

抽象的な絵になればなるほど、基準が自分の中にしかないからだろうね。<いい感じ>っていうのが。

青木

そう。あと、すごく鮮度が出ます。気持ちがすぐ描けるので。形とかだと一回そこにフィルターがかかるじゃないですか?例えば犬描きたいと思ったら、画像検索してしまったり。そういうんじゃなく、キャンバスにポンて、すぐ行ける、そういうのが今、一番楽しいですかね。でも次の日になってみると、また気持ちが違ったりして訂正したりして。

—音楽でのアウトプットとどう違います?

青木

自分の”なんかいいな”じゃ通用しない時ありますもんね、バンドは。

木暮

バンドはね。そうだね。すげえいいなと思ってても。

青木

で、それがストレスになるときもあれば、それを超えてくるような快感が、その先にあるときもあるし、そこはだいぶ違いますよね。関連性と言われるとなんなんでしょうね?音楽があって、影響を受けて自分でジャケットを作ってるとなると繋がりはでかいですよね。音楽基準というか。

木暮

そうだね。特に最初の頃はノリで作ってたんですけど、最近は音楽と歌詞を聴いて作るから、まるっきりそこにインスピレーション受けてるわけじゃないんですけど、少しはそれが、自分の作ってる確かなところに入ってるかなと。

—両方やってるからこそいい部分があると。

青木:絵の方だけだと、僕が絵を描いてるって知ってもらったのはバンドきっかけみたいなところあるんで。なんかまぁ、多少ちやほやされてなかったらもしかしたら辞めてるかもしれないですね(笑)、わかんないですけど。

木暮

まるっきりフラットな状態からギャラリーで絵を発表しても友達しか来ないかもしれないもんね。

青木

そうですね。なんか、やってたら”いい”っていう人が増えた状況っていうのは、Regaってバンドがあったからだと思うので、何もないところからやってたら挫けてたのかもしれないなと、思いますが(笑)。やってても世には出してなかったかもしれないですね。

—普段から絵画や写真、本物を見る習慣はありますか?

木暮

レコードを買うのが趣味だと思うんですけど、(ディスク)ユニオンとかで中古のレコード買って、中を見るのが好きっすね。ジャケットなんでしょうね、俺が影響受けたのって。絵画とかより。

青木

僕は美術館行きます、割と。好きですね。

—木暮さんはジャケ買いしたものから濃いエッセンスを吸収するタイプですか?音楽性とともに。

木暮

古いのだと、今みたいに技術が発達してないから、例えば人力で、胴体4個並んでて、首が伸びてるっていう絵があるんすけど、今だったら写真で加工するところを結構、超リアルな点描で描いてあったりする(笑)。しかも写実的に描いてあるから、そういうのは見ちゃいますね。

—最近、青木さん何か見に行きました?

青木

最近、あんまり行ってないですね。行くと必ず影響受けるんで。今は抽象やってるんで、特に抽象画を見に行こうと思わない。

—単純に大きい抽象画とかを見ると感動しますけどね。

青木

でかい作品描いた方がいいって言われます。ジャクソン・ポロックとか、床で描いてるじゃないですか?で、脚立とか乗って上から確認したりするんでしょうね。

木暮

あー(笑)、住宅事情がちょっと許さないね。この壁とか。結構いい感じだけどね、すでに(笑)。

青木

すでにいい感じですよね。抽象画ってこういうことですね。<すでにいい感じ>。

木暮

ははは。

青木

ていうか、これを<すでにいい感じ>と思う、その共感覚的なところがない人もいるじゃないですか?『綺麗にしたら?』みたいな。

木暮

そっちの方が多そうだよね。日本は特に東京は古い建物がないじゃないですか。ま、地震が多いからだけど。その辺海外行くと、ど古いのがあるもんね。

—その辺はご自身の表現に直結してますか?

木暮

うーん、ある、とは思います。でも具体的にちょっとわかんないけど。

—確かに上手い下手とか、綺麗汚いの問題じゃないというか。

木暮

そこがちょっと音楽と似てるかもしれないです。例えばテンポとか音程に沿った演奏がいいかどうかは聴く人によって違うから。ま、俺はたぶん、フラットな真っ白な壁っていうのはあんまり好きじゃない。

青木

すごいこれ(壁)が題材になりましたね(笑)。

<NEXT 1/2>「音楽と絵を描く、デザインすることは不可分だし、人任せにせず、バンド運営をソリッドにしていくことは必要だと思う」(木暮)

「音楽も絵もより楽しむ方向に身を投じる為に、修行のように毎日絵を描いている部分がある」(青木)

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