2018.12.31

信用が生むモノづくり

篠塚将行(それでも世界が続くなら・ミュージシャン) x 吉田ハレラマ(映像ディレクター)

2018年9月、活動休止となったロックバンド、それでも世界が続くなら。フロントマンである篠塚将行が、そのバンドのミュージックビデオを手がける映像ディレクターの吉田ハレラマと対談する形でお互いのモノづくりに対する考え方を語る。また、それでも世界が続くならのグッズ制作を手がけた株式会社ラッカの代表・加藤晴久が進行する形で、三者がどのようにそれでも世界が続くならの音楽活動に関わってきたかにも触れていく。

「こういうふうにしてくれ、じゃなくて、お前がやりたいことをやってみてよ、と。そういうモノが人に刺さるというか、残るというか」(篠崎) 

それでも世界が続くなら

篠塚将行(以下、篠塚)

加藤さん(ラッカ)と「それでも世界が続くなら」はBAJ時代からの付き合いですよね。

加藤晴久(以下、加藤)

BAJに入る前はどんな感じだった? Tくん(元マネージャー)が一人で担当やっていたの?

篠塚

Tは同い年で知り合いだったんで担当マネージャーってより友達って感じですね。もともとイベンターみたいなことをやってたんだけど、足腰が悪くなって金銭的にも続かないので音楽から離れると聞いて、僕はそれが寂しくて。ちょうど僕のバンドが動き始めた時だったので、自分で貯めていた50万円を渡して、「僕のバンドを嫌いじゃなければ、このお金で僕のバンドのCDをリリースをすれば辞めなくていいじゃん」と。

吉田ハレラマ(以下、吉田)

信じられん。

篠塚

昔、お金の使い込みもしちゃって干されかけたこともある人だったんですけど、「お前が使い込んじゃう人間なのわかってる上でこのお金渡すから。やってくれ」と。その後、一緒に二度のリリースがあったんですけど、二回ともリリース直前に飛んでいなかったり。二回目のときは、連絡が取れないので実際に発売日がずれちゃったり。ライブにも来たり来なかったり気まぐれで。そういう意味じゃ危険な人間だったと思うんですけど。僕のエゴといいますか、僕が辞めてほしくなかったから。

吉田

すごいなぁ。

篠塚

「もし僕のバンドが間違ってメジャーデビューすることがあるんだったら、僕がお前を連れて行くから」と約束してて。なので、BAJに入って日本クラウンからメジャーデビューする時に「こいつも一緒じゃないと受けません」と言って、一緒に来てもらったんです。そこから、ラッカと出会ったんですよね。

加藤

そうか。聞いたことなかったな。グッズ制作の話をもらった時は(Tくんと)もう一緒にいる時だったもんね。メジャーデビューしてすぐだったかな。

篠塚

そうですね。デビューした頃は、アートワークやグッズはこうしたいというのはあまりなかったですね。自分のバンドのグッズができるなんて思ってなかったし。それに元々、「人間の力を信じる」スタイルなんですよ。こういうふうにしてくれ、じゃなくて、お前がやりたいことをやってみてよ、と。「これは私の作品じゃない」と作り手が思うんじゃなくて、その人が一番やりたいことやってもらって「これは私の作品だ」と、100%に近い純度で思えるものにしてもらいたい。そういうモノが人に刺さるというか、残るというか。そのほうが創った人の人生にとっても良いものになると思っていて。

加藤

篠塚くんは、そういうのを節々に言葉にしてくれて、それが一緒にやっていて嬉しくてね。うちもいろんなデザイナーがやらせてもらっているけどモチベーション高くやれているね。

篠塚

僕ら、細かい指定なんてないですもんね。まあ、僕らのバンドを好きでいてくれる人たちが思うグッズのイメージと極端に違う場合は、ちょっと変えてほしいって言う時もありますけど、基本的には、自分たちが良いと思うものを提案してくれていると思っていますよ。ハレラマくんもそうだと思ってるし。ジャケットの絵を描いてくれているしのぶちゃんも。

おおはましのぶがイラストを手がけた、『52Hzの鯨』

加藤

おおはましのぶさんとはどういう出会いだったの?

篠塚

入院している病室からファンレターで絵を送ってくれて。なんていうんですかね……、僕は毎日、絵やジャケットのこと考えてないんですよ、むしろ全然考えてない。ほとんどのバンドマンはそうだと思うんですけどね。自分が真剣に音楽だけをやっていると思えるからこそ、ずっと音楽以外のことを考えてない人間が、急に「こういう風にジャケットできませんか?」って言い出して、良いものができる感覚が僕にはないんですよね。実際、僕が考えたって数日だし。

加藤

そこはプロというか、経験値が高い人にしっかりパフォーマンスを発揮してもらった方がいいということ?

篠塚

ざっくり言うとそうだと思うんですけど。勘違いだったらすいません、なんですけど、生き方として、ライフワークとして、自分がやりたくてデザインしているんですよね、と。自分がやりたくてMV創ってるんですよね、と。僕はMV制作やデザインすることを選んでない人間なんですよね。君よりグッズや映像のことを考えてないし知らない。

加藤

うん。

篠塚

だから、病院から送ってくれたその子の絵を使えたらと。もし仮に、誰も僕の音楽を良いと言わなくても、僕らやその子にとっては一生忘れられないものになる。それだけで僕にとってはやった価値がある。「一緒にモノを創って良かった」とまず目の前にいる人が思えないモノって、知らない誰かにも響かないかもしれない。ラッカもそうだし、ハレラマくんもそうだし、僕にとっては皆が楽しんでいるけど目の前の人には響かないモノより、関わってくれた人が一緒にやれて良かったと思えるかどうかの方が大きいんです。そのたった一人に響かなくて悩み続けたことがあるので。

暗闇で演奏するライヴ・スタイルのため、インタビューも暗闇で行われた

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