2018.11.20
それでも世界が続くなら
それでも世界が続くなら
イラストレーション : 森本百恵
“それでも世界が続くならのワンマンライブの終演後”を描いたという、このジャケット。遠目からは写真のように見えるが、実は絵画だったりする。
彼らのライヴグッズではTシャツにも起用されるほど印象的なこの絵画。
あえてキチンと写実せず、各フォルムを意図して歪んだ形で表しているところに、彼らのライヴ終演後の、客電がつき、現実に引き戻される前の揺らぎや心地よさ、ちょっと悪夢の入ったデイドリーム感が漂っており、彼らをキチンと観てきた者のみが描き出せる描写のように感じた。
ジャケットのイラストを担当したのは、ガンとの闘病生活を続ける森本百恵。かつてはそれせかの篠塚が楽曲(作曲)を提供したこともあるシンガーソングライターだ。
このブックレットは中身はリリック以外余計なものは色ともに一切ない。それだけ歌以外の余計な情報を必要させない。そんな説得力も感じる。まさに聴きながら読みたい。そんな一冊となっている。
彼らがここまでに一方的に放ってきた想い。結果、世に、聴き手に、何を残せたのか?がある意味ベスト盤以上に問われ、分かるアルバムだ。諦念の先にほのかに伺える希望。自己嫌悪の向き合う末に出会う自己愛。そして少しでも自分が過ごしやすいようになれる世界を想い願い自問しての自身の心に向けての叫び。結果、生まれる無理やりにでも踏み出さなくてはならない明日の一歩への覚悟…。いい意味で彼らは全く変わっていない。それだけは分かり、それがとても嬉しい作品だ。圧倒的に美しく尊い今作。いつもより全曲、外に向かって叫んでいるところも印象的だ。
何を残せたのか?いや、何を残せるか?だ。例え、活動中止になろうと音楽は流れ続ける。それが眼前なのか?心の中なのか?に変わるだけだ。
けっして細部までは思い出せなくなっていっても、込められた想いや願いは忘れない。いや、忘れられない。
それでも世界が続くなら「イツカの戦争」
演出 : 吉田ハレラマ
撮影協力 : 宮下太輔
ブックレットの表4とリンクするMVだ。2018年6月28日の「ストリベリームーン」と呼ばれる、地球から月が一番遠い日に撮影されたという、このMV。活動中止に際する彼ら最新のMVは、自身の想いの縮図が常に吐き出されてきた、そのライヴという方法論と同居させる映像として紡ぎ出された。
監督と演出は栃木在住のMVやアニメーションを中心に制作している映像作家の吉田ハレラマ。そして、撮影協力にはカメラマンの宮下太輔のメイキングネームが並ぶ。
ここ最近の「それせか」のMVを監督してきた吉田。キラキラとした美しいものの前で放たれる、それらに憧れつつも対照的な感情が込められて放たれる歌と演奏の表裏や対象、そしていつの日にかなるかもしれない逆転をも上手く楽曲と共存させ描いている。
美しさと苦しさの同居。だけど、そこを抜けたらもしかしたら待っているかもしれないキラキラとしたもの。そんなことを信じさせてくれるMVだ。耳だけでなく、目に飛び込んでくるような歌詞の扱いにも注目。
TEXT : LUCKAND編集部
それでも世界が続くなら OFFICIAL SITE
http://www.soredemosekaigatsudukunara.com/
THIRD MINI ALBUM
『それでも世界が続くなら』
BZCS-1166
¥1.852(+tax)
【ROCKBELL】
2018年8月1日 発売
1. イツカの戦争
2. 魔王とバッドエンド
3. SNSとオフライン
4. 銃声のエンターテイント
5. 春と呪い
6. ハピネス
7. ユートピアの生活費