2018.07.23

音楽写真の最前線—自分のスタンスを明示する必要性

西槇太一(フォトグラファー)× ヤオタケシ(フォトグラファー)

ライブやフェスの活況で、ライブカメラマンを目指す若い世代も多い今。が、それが目的化していないだろうか。今回はマネジメントからカメラマンに転身し、ヒトリエ、アルカラ、Age Factory、MUCC、9mm Parabellum Bulletなどのライブやアーティスト写真、「ギターマガジン」等での機材撮影などを手がける西槇太一と、RADWIMPS、cinema staff、04 Limited Sazabys、My Hair is Badらのライブフォトやアーティスト写真、ジャケット写真を手がけるヤオタケシという、まさに人気アーティストのライブ最前線で活躍する二人の対談を実施。そこから浮き彫りになったのは「自分ならではのアーティストの捉え方」と、「自分のスタンスを明示する写真」。仕事を任されるカメラマンの思考を読み解いていく。

「ライブもアーティスト写真も楽器も撮りたいと思った時、圧倒的に経験値が少なく感じてスタジオに入ったんですよ、一回り下の子と仕事したりして(笑)」
(西槇)
「大学の専攻は建築。でも興味がなくなって卒アルを作る会社に勤めながら友達のバンドを撮ってました」(ヤオ)

—まず、お互いのカメラマンとしてのプロフィールに関して意外に思われたりしたことがあれば聞かせてください。

ヤオタケシ(以下、ヤオ)

西槇さんはバンドマンからマネジメントを経て、じゃないですか。そんな中でも更に「あー」と思ったのは、(撮影)スタジオに入ってたんだなということで。道理で今の西槇さんのスタイルがあるんだな、みたいなのはすごい感じました。

西槇太一(以下、西槇)

カメラマンでもライブ写真を専門にするのかどうするのか色々選択肢があったんですけど、やっぱりアーティスト写真だったりジャケット写真、あと楽器も撮りたいなというところもあって、その時の経験値だけだとちょっと足りないなと思って。それでマネジメントの時にお世話になったカメラマンと色々話した時に「イイノスタジオいいんじゃない?」って言われて。(マネージャー)辞めて一週間後ぐらいに面接に行って、8ヶ月間スタジオマンとして、干支が一回り違う年下の先輩とかと(笑)、現場入らせてもらって。8ヶ月なんで全然少ないっちゃ少ないんですけど、そこで色々ライティングや所作を学べたなっていうのがありました。

ヤオ

スタジオ入りたいんですよ。スタジオ経験ないんで、してみたいなってずっと思いながら20代が終わりまして。

西槇

広告とかデカい現場ばかりで、トップクラスのカメラマンの方が毎日来るようなところだったんで、その経験はやっぱり宝ですね。未だにその現場のセッティングとか明確に覚えてるんで。そこで自分にとって好きな写真撮る方と、そうではないというかいろんな写真がある中で、「自分はこういう写真が好きなんだな」っていうのが見えたのは大きかったですね。

—ヤオさんはプロカメラマンとしての勉強はどんな風に?

ヤオ

僕も元々、大学の時バンドやってたんですよ。でもその時は食ってこうとかじゃなくて、ハードコアのシーンが好きで、今はデザイナーをやっているVERDYとかともバンド時代に友達になって。それがまぁ大学卒業と同時にふわっと消滅して。その時に興味があったカメラをやり始めて友達のバンドマンとかを撮り始めたのが最初でした。

西槇

それからは知り合いを撮り続けて?

ヤオ

そうですね。僕、大学は建築学科だったんですけど、全然途中から建築に興味なくなったんです。それで新卒で学校の卒業アルバムを作る会社に就職したんです。とりあえず写真の仕事してみようと思って。それでそこの仕事こなしながら、夜はライブハウスに写真撮りに行くみたいな生活してて。で、そこも3年でやめようって決めてたんで、25ぐらいでやめて、そこからフリーでって感じですね。

ヤオタケシ

西槇

僕も写真は趣味でずっとやってて。バンドやってたんで対バンや友達撮ったりとか、音楽ベースで撮りつつでしたね。それでマネージャーやってから、ちょいちょい写真が必要になる現場があって、もちろんカメラマンさん呼んで撮っていただくこともあるんですけど、結構急ぎのケースでは自分で撮って媒体に出してみたいなことがあったんで、意外と今やってる仕事とそんなに変わらないというか(笑)。比較的パーソナルな部分とかも撮ったりするじゃないですか。そういうのはあまり感覚変わらずに今もやれてるので、マネージメントの経験が今に生きてて。ずっと付き合いのあるマネージャーさんから撮影のご連絡いただいてとかもありますし、そこはやっぱマネージャーやってよかったなとは思います(笑)。

ヤオ

今の話聞いてると西槇さんのプロフィール、結構最強じゃないですか。

西槇

実際よかったなと思ってます(笑)。音楽の現場ってライブだったりレコーディングってすごい繊細なところじゃないですか。ライブだったら舞台監督いて、ローディーさんいて、その方とコミュニケーション取れないと、ライブの袖だったり裏ってすごく撮りづらくて。なんですけど、やっぱ知り合いのローディーさんや舞監の方がいたら、「いいよ!」って言っていただけたりするんで、それはものすごくありがたいというか。そこでコミュニケーションとって「すいません!」っていうのが、結構人見知りなんで疲れちゃうところあるんですけど、そこがパン!て、一歩二歩踏み出せるので嬉しいですね。

—ヤオさんの場合、友達のバンドを撮るところから正式にマネジメントから依頼がきてという境目はなんだったんですか?

ヤオ

僕、ラッキーだったなと思ってるんですけど、友達のバンドが、パイプカット・ウェディングって同い年のバンドが名古屋にいて。それがナインスアポロだったんですよ。そのバンドがメインでやってたライブハウスの後輩として04 Limited Sazabysがいたり、事務所の後輩としてMy Hair is Badがいたりして、自然に繋がれてて、僕もなんとなく友達みたいな感じで撮ってたら、みんな人気者になっていって。僕もそこに負けないように写真頑張ろうみたいなモチベーションでやっていたら、自然と状況が変わっていきました。

西槇

そういうタイミングから撮られてるっていうのは羨ましい。つい2日前にヤオさんの展示を見にいったんですけど、それぞれカメラマンさんが長い時間一緒に時間を共有してるからこそ撮れる写真がすごく多いなって感じて。ほんとそういうカメラマンになりたいなと思いますね。ずっと一緒に居られるというか。もちろんアーティストによって、いろんな人や角度から撮られていいし、いろんな目線のビジュアルがあっていいと僕は思ってるんですけど、その中で「この人に撮って欲しい」と思える関係性っていうのはすごく羨ましいですね。

西槇太一

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「アーティストの人間ぽいところを知って、それが写真に介入するのは必ずしも正解じゃない」(ヤオ)

 

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