2018.02.28

アクリルの可能性を探究し続ける町工場

ヒトリエ「シンボルスマホリング」工場レポート

東京都内で二番目に町工場が多い足立区。そのある町工場で、バンド・ヒトリエのツアーグッズの一つ「シンボルスマホリング」は制作された。アクリルを材質に使ったこの逸品は、素材選定・型抜き・研磨・印刷、そしてパーツと合わさり届けられたもの。一見シンプルながら実は様々な工程を経て成されている。その製造過程を追うべく、LUCKAND公認リポーターのケイシに現場を訪ねてもらった。そこで働く社長や若き職人から話を訊くうちに垣間見れたのは、飽くなきアクリルの可能性を探究し続けている町工場の姿であった。

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コンニチハ、ケイシです。
今回は、ヒトリエの全国ツアー『UNKNOWN-TOUR 2018 “Loveless”』のグッズの一つ「シンボルスマホリング」の製造工場を取材してきました。

ヒトリエ『UNKNOWN-TOUR 2018 “Loveless”』ツアーグッズ シンボルスマホリング

このスマホリングの主な材質は「アクリル」。正確には、「アクリル樹脂(じゅし)」というもので出来ています。このアクリルは、プラスチックの中で最も優れた強度と透明性、そしてあまり劣化しない耐候性が特徴の素材です。「プラスチックの女王」とも呼ばれるその高い性能から、顕微鏡の光学レンズや街中の看板、アクセサリーなどに幅広く使われています。皆さんの身近なところにもあるんじゃないかな。

アクリル工場に展示されているアクリル商品の一部

ヒトリエ『UNKNOWN-TOUR 2018 “Loveless”』のグッズではハードカバーiPhoneケースも販売されており、その素材感としても相性の良いアクリルのスマホリングが採用されたようです。付属品としても、単体でも使えるアイテムですね。


ヒトリエ『UNKNOWN-TOUR 2018 “Loveless”』ツアーグッズ iPhoneケース

スマホリングは単体でも、ケースに貼り付けても使用可能

そんなアクリル樹脂を使った、今回の「シンボルスマホリング」は、一体どのような過程を経て作られるのでしょうか?一見シンプルに見えるこのアイテム。これまでのプロダクト制作と同様、多くの人が関わり、沢山の過程を経て作られる、凄くデリケートなアイテムだったりします。

アクリル工場レポート

そんなわけで、「シンボルスマホリング」を生産したアクリル工場にやってきました!この工場ではヒトリエ以外にも様々なアーティストグッズやアパレルアイテム、ノベルティ、一点もののアクリル製品などが長年作られてきました。

素材選び

この工場では、6000種にも及ぶ模様(ラメやマーブル、ストライプやボーダーなどなど)のアクリル板を用意しています。この中から、それぞれの用途や仕上がりイメージに合うものをチョイスし、制作に入ります。「シンボルスマホリング」の場合は無色透明のアクリル板を使って作成しました。

シンプルなものから幾何学な模様まで、種類は様々

型抜き刃の選定

板状のアクリルを切削することで、オリジナルの形を作っていきます。硬いアクリルの材質を希望のデザインに削るには、どんな刃が的確なのか?選定するのは職人さんの感覚と経験です。テクノロジーが発達している現在でも、やはりその微調整は、職人さんが長年培った「感覚と技術」なんですね。

機械にセットする刃は全て工場長が1つ1つの角度を見定めながら研いで作っています。刃物を研げないと、一人前の職人とは言えないそうです。焦げたり溶けやすいアクリルには後述のレーザーカッターに比べて、この機械の刃が最適です。「シンボルスマホリング」の精密さは、ここから始まっているんですね。

ちなみにこちらの工場長、実は元プロボクサーだったそう

型抜き

選定された刃をこのNC(エヌシー)と呼ばれる大きな切削機械にセットし、アクリルを型抜きしていきます。NCのベースは鋳物(いもの)で作られています。鋳物とは高温で溶かした金属を砂などで作った型に流し込み、冷やして固めた製品のことで、高精度工作機の鋳物はすぐには使わず、あえて一年間程放置し、伸縮を繰り返した鋳物をさらに削り、温度や湿度の影響を受けにくい精度の高い機械にしていきます。このNCもすでに25年使い続けているようですが、まだまだ最新の機械より精度が高いそうです。

NC

データの読み込みにはなんとフロッピーディスクが使われています。

NCでの切削「シンボルスマホリング」が無駄なく型抜きされていきます

レーザーカット

2000年頃から現われた次世代カッターです。光の力を熱に変え、カットしたり、彫ることが出来ます。「シンボルスマホリング」ではリング部品をハメるカシメ穴を空けました。こちらは大量のものが一度に早く切れるので、量産に適しています。場合によっては素材を焦がしてしまう恐れがあるので、素材やデザインによってどのカッターが適しているか吟味して使い分けています。

レーザーカット データに沿って精密に切断されていく

研磨(けんま)

印刷をする前に、削り出したアクリルを研磨、つまり磨きをかけます。アクリルは非常にデリケートで、表面に傷がつきやすいので注意が必要。傷をつけずに磨くために、研磨機には油と共に竹のチップを大量に入れ、約12時間回します。アクリルの最大の特徴である透明度・高級感はここで決まるんですね。

研磨機 フタの中は企業秘密とのこと

竹のチップ

インクジェット印刷

研磨されたものを一度に36個プリントできる「型」に一つひとつハメこみ、その上からインクジェットプリンターで印刷していきます。「シンボルスマホリング」では光を当てると固まる特殊なインクを使用。アクリルの上からも印刷が定着しやすいんだそうです。他にもシルク印刷や彫刻といった様々なパターンがあり、用途や材質によって手法を分けています。

「シンボルスマホリング」の印刷データ

量産時はこの型に本体をハメこみ、印刷します

印刷のあとには別ラインで作ったリング、カシメパーツを取り付けて完成です。一見シンプルに見えるスマホリングですが、実は、これだけの過程を経て、みなさんのもとに届いているんですね。

続いては、この工場で働く社長さんと若いスタッフさんに話を訊いてみました。

<NEXT>「アクリルの可能性に魅せられ門を叩いた、若き職人とは」

 

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