2016.12.13
『祐介』と『世界観』
クリープハイプ
ジャケット・デザイン:寄藤文平
広告やプロジェクトのアートディレクション、本や雑誌のエディトリアルデザインを中心に活動。2002年、文平銀座設立。2008年、『暮らしの雑記帖』『ナガオカケンメイのやりかた』で第39回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。
岡本欣也と製作した日本たばこ産業のポスター・新聞広告で2005年東京ADC賞受賞。
今年の6月には、Vo.&G.の尾崎世界観が初の小説「祐介」を発表。「音楽で書けないことを書く」という動機の元、自身の本名をタイトルに冠した本書。売れないバンド活動やスーパーのアルバイト、どうでもいい情事や些細な暴力といった「日常」。そこに対し沸き起こる感情、夢の中の出来事などをクリープハイプでの歌詞とは別ベクトルな切り取り方で綴られている。実体験とフィクションに尾崎の独特な語彙力やテンポ、表現に吸い込まれ、気が付くと目を離せなくなる。売れないバンドマン「祐介」が、後の「尾崎世界観」になるまでに何が起きたか?一読した者が、尾崎ならびにクリープハイプの新たな一面に踏み込めることが許される、重要な作品と感ずる。
8月には先行シングル「鬼」のリリースの後、9月に発表されたニューアルバム『世界観』の発売。書籍、アルバム初回盤、限定盤が連動したパッケージデザインとなった。連鎖した作品群であることをモダンかつキャッチーなデザインで示唆することで、これまでにない遠心力を生み、圧倒的な説得力を持った作品となった。
アルバム『世界観』はこれまで以上に、愛しているのにその人を信じ切れず、逆に哀しくなり、寂しくなっていく自分が浮き彫りにされた全14曲となった。手を繫ぎ一緒に歩いてはいるのだが、決して同体にはなれない平行線感に満ちており、それがいかにも彼ららしい。
より黒っぽさやハネる部分が増し、彼らならではのキャッチーな連呼に近いリフレインの確立感も目立つ今作。「TRUE LOVE」でのラッパーのチプルソの客演も交えた、尾崎のボキャブラリー豊かでフリースタイルチックなラップにも注目だ。
「鬼」
監督・脚本 : 松居大悟
TEXT : 池田スカオ
クリープハイプ ホームページ
NEW ALBUM
『世界観』
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