2019.01.10

逆境で生まれたデジタル・イラストレーター

ますだみく(イラストレーター・漫画家)

現役の大学生ながらInstagramのフォロワー数は12万人を優に越え、センチメンタルな恋愛模様を描いた作品が同世代の共感を呼んでいるイラストレーター・漫画家のますだみく。1995年生まれの彼女が創作する作品は、主にiPadを使ったデジタルによるものがほとんどだ。それは時代背景だけではない、彼女の育った環境も影響している。2018年9月には書籍も発売し、若くしてその活動に注目が集まるデジタルネイティヴのイラストレーターに迫った。

「誰でも自分を売り出すことができる時代なので、動くか動かないかで左右される」

−活動が本格化していったのはどういうきっかけだったのですか?

ますだ

さっきお話したように、ゼミの教授に言われてポートフォリオ代わりにInstagramに作品を1日1枚投稿し始めたのが2015年で。それを見たヴィレッジヴァンガードさんから商品化のお話をいただきまして。そこからさらに、イラストのお仕事を少しづつ頂けるようになりました。漫画もたまに2〜8ページぐらいの短編を投稿していて、地元の誌面やWebマガジンで短編漫画の連載をさせて頂いたり。

−そこから今やInstagramで12万人を越すフォロワーがいらっしゃいますが、そこまで多くの方に届いているのは何が大きいとご自身では感じていますか?

ますだ

投稿当初は、Instagramにあまりイラストや漫画を投稿している人がいなかったので、目について見てもらえることが多かったのかなと思います。自分では、課題を投稿しているという感覚だったので、正直そこまでフォロワー数が伸びるとは思っていなくて……。むしろ怖くてやめようかとも思ったこともあります。でも今は、県や国を越えてたくさんの方に作品を見て頂いているので、やっていて良かったと思っています。

−ご自身のクリエイティビティはどこから生まれてきますか?

ますだ

音楽から得ることが多いかもしれないですね。もともと感情移入しやすい性格なので、歌詞や曲に聴き入ることで想像力や発想力を働かせています。仕事や作品の雰囲気に応じて、曲調を変えることでアイディアを出したりもします。

−作品にセンチメンタルな恋愛や女の子を取り上げている理由はなんでしょう?

ますだ

もともと私自身が恋愛漫画や恋愛ソングが好きだったからですね。イラストを見た人がその先のストーリーを想像してコメントをくれたり、作品と似た様な状況になっている人から「自分だけじゃないんだ、と勇気付けられた」と展示会で言ってもらえるのも嬉しくて。

−まさに同世代の女の子などからの「共感」を得ていることが、今の活躍に結びつく一つの大きな要因に思えますが、作品はご自身の体験が大きいですか? 周りの声や受け手がどのように感じるかを考えて作品を創ることもありますか?

ますだ

自身の体験ではないですね。自分のことは恥ずかしくて描けないです(笑)。現実からは慣れすぎない想像、こういう人たちもいるんじゃないかな、とか、こういう人がいたらいいな、といった想像を膨らませて描いています。共感してもらえることは嬉しいのですが、それを求めて描くというスタンスはなかったですね。自分のことではないけど、自分の中の想像という主観に立って、描いています。

−この秋(2018年9月)には書籍も出版されましたね(『匂いとか思い出の消し方とかわからないから、上書き保存できたらいいのに』KADOKAWA)。どんな内容でしょうか?

ますだ

この本には4組の男女が出てきます。みんなそれぞれ悩みを抱えたり、上手く行かない恋愛をしています。多分、現実でもそんな人たちばかりだと思うのですが。忘れたい人ができてしまっても、匂いとか思い出とか記憶に染み付いてしまったものはなかなか離れてくれませんよね。それでも、また前を向かなければいけません。読み終わった後に、辛いことがあっても少しでも前を向いて進んでもらえたら嬉しいなという思いを込めました。
実際、制作中に私自身もたくさんの別れを経験しました。恋人だったり、家族だったり……。私自身も辛い状況にいたので、今思えば自分の背中も押したかったのかもしれません。

−今後はどういった活動を考えていますか?

ますだ

CDジャケットやMVなど、音楽のアートワークに取り組みたいですね。それと、今年は様々な場所で展示をさせて頂きまして。回数を重ねていくうちにただ作品を見てもらうだけではなく、空間創りにこだわりたいと思うようになりました。福岡、名古屋で開催した『わたしたちの302号室』に来てくださった方々が、「作品の主人公に感情移入した」と言ってくれまして。ネットで簡単に作品が見られる時代に会場まで見にきてくれる人を大切にしたい、とより思うようになり。今よりもっと物語や空間演出にこだわって、その場に足を運んでくれた人が会場を出る時に「一本の映画を見た様な満足感」を得てもらえる様な個展を開催したいです。

−ご自身も同世代だとは思うのですが、未来のクリエイターに向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。

ますだ

誰でも自分を売り出すことができる時代なので、動くか動かないかで左右されると思います。今日も知り合いとそんな話をしていたのですが、2年前に動いた人は、やっぱり今になって何か形ができていたり結果が出ているけれど、その時まだいいかな、と言って動いてなかった人はやっぱり何も変わっていない。若いうちは後先考えずに動けばいいと思います。逆に言うと、若くて同じように動いている人たちはいっぱいいて、それより高いレベルをこれからどんどんと求められていくので、自分もこれから負けないように頑張っていきたいです。

INTERVIEW&TEXT : LUCKAND編集部
PHOTO : ますだみく

ますだみく

1995年福岡生まれ。イラストレーター。恋愛模様を描いたセンチメンタルなイラストなどを主にデジタルで描いています。
https://masudamiku.wixsite.com/mokotomoko

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