「自分の遍歴や描き続けてきた結果が原画を通して見てもらえる展示にしたい」

—8月15日からは待望の展示「河野愛 原画展『MY DRAWINGS』」が始まりますね。

河野愛

そうなんです。基本、私の作品って、既にデザインに落とし込まれたものでしか、みなさん観たことがないと思うんです。実際に世に出たものってデザインが施されていたり、色がつけられていたりするものばかりなので。大きさも原寸ではない場合がほとんどだし。せっかくなので10周年のこの機会に、是非みなさんに、それらの原画を見てもらいたく行うことにしました。

—このような原画を展示する試みは初ということですが、実際に現物を見ると感動します。凄く緻密だし、手触り等もよりリアルに感じます。

河野愛

完成までの過程やボツになったものもお見せする予定です。むしろ、現物の息づかいを見てもらいたいところがあるかもしれない。自分のこの10年を客観的に見ることが出来たし、その遍歴や描き続けてきた結果をみなさんにも見てもらえる展示会にしたいです。

—ちなみに展示会の目玉は？

河野愛

10年を振り返る意味でもある展示なので、10年経った今の私が描いた新作も、メイン・ビジュアルを含めて４点描きました。こちらに関しては、私自身をあえてモデルに描いてみました。タイトルも『MY DRAWINGS』だし。実は当初、「人間を描こう！」とは思ってはいたものの、特に自分と決め込んではいなかったんです。だけど、全然関係ない人を描くんだったら、今回は全てこれまで自分が生み出してきた絵だし、自分自身をモデルにして描くのも面白いかなって。それこそこの絵を描く為に、自分の顔写真を気持ち悪くなるほどずっと眺めて挑みましたから(笑)。

—同時に販売が開始されるLUCKANDとのコラボレーション・グッズに関してはいかがですか？

河野愛

Tシャツとトートバッグ、2種のiPhoneケースを作っていて、最初は、“自分の顔をグッズにするのはいかがなもんだろう…？”との懸念もあったのですが、いい感じで顔ナシのデザイン・パターンで作っていただきました。ここに使われている新作は、私の絵にイメージされる動物を今回はあえて入れずに、逆にこれまであまり発表してこなかった、人を描いたというところが大きいです。新作なんだけど、これまでの私の10年間の遍歴やテイストがオマージュのように散りばめられているし。それこそこの絵に関しては、自分がその世界に入り込んだイメージで描きましたから。最新作にして、現在とこれまでの私が凝縮された絵になっています。

—河野さんの今後の夢や目標を訊かせて下さい。

河野愛

作品集をキチンとした書籍として出したいですね。これまでも自費出版で出したことはあるんですが、みなさんが全国で手に取っていただけるような作品集を出したいです。あとは海外での活動ですね。商業施設等、ちょこちょこお仕事をさせていただいてはいますが、もっと本格的に挑んでみたいところはあります。その為にも海外ビジネスの勉強をしなくてはならないだろうし…。

—現在、欲しいものがあったら教えて下さい。

河野愛

絵を描く環境を整えたいです。私、画材も環境もずっと長年愛用しているものばかりで。こと椅子に関しては、まだ会社員時代に座り心地が良くて買った木の椅子を10年来使っていて。さすがに最近はずっと座って作業していることも多く、腰への負担も心配なので(笑)。そろそろ椅子も買い換えたいですね。

—最後に未来のクリエーターにメッセージをお願いします。

河野愛

私の場合、小さい頃より「絵を描くことが好き」という、そのストレートな気持ちだけでここまでやってきていたりするんです。その「好き」を諦めることなく、嫌いにならずにずっと続けた結果が、いまに繋がっていたりもするので、みなさんも、好きなものに対する熱い気持ちを持ち続け、諦めずにやり続けていたら、何かがついてくるんじゃないかなと思うんです。なので是非、その好きという気持ちをいつまでも大切にし、その好きなことをやり続けて欲しいです。

河野愛 愛用品

シンプルな方が自分の世界観をより出しやすいと自分では思っています。これらがあれば基本、私はどこでも描けます。画材に関しては、特にこだわりもなくて。昔から身近なものを使って描いてきたところはあります。それも私の場合、絵を勉強したことがないことと関係していて。何を使ったらいいか分からないんです(笑)。私の場合は基本、絵を描くことが好きな女の子が、趣味で描いていたものが、続けていくうちに気づけば仕事に繋がってきたようなものですから。

丸ペン

主に漫画家さんが使っているペンです。滑りどめと指が痛くならないように手製のクッションをつけています。

ケント紙

漫画家さんが使うペンを使うので、それと相性の良い、描きやすさが一番のこの紙を使っています。

手袋

手にインクがつかないように、いつもこれをハメて描いています。指先の部分のみカットしてペンを握ってます。だいたい半年でボロボロになってしまうので、その度に新しいものを作って使っています。歴代の使用済の手袋は全てとってありますよ。

シャーペン(無印良品)

鉛筆ではなくシャーペンを使っています。細い線が描けるし、私の場合、鉛筆よりもシャーペンの方が楽なんです。削る必要もないし（笑）。

INTERVIEW&TEXT:LUCKAND
PHOTO：垂水佳菜