2021.12.24

アートだからこそできる貧困問題解決へのアプローチ アートを通じて世界の「貧困」に立ち向かう

大嶋玄(GEN)

アートによって貧困問題の解決に取り組む「アート街プロジェクト」。そのプロジェクトを立ち上げた大嶋玄(GEN)は、世界各地へと赴き、現地の人とふれあいながら発展途上国にアートであふれる街をつくってきた。「アートは世界を救う」その言葉を実現するため、若くして世界の貧困問題に立ち向かう彼が確信する「アートの力」について迫った。

「いつか自分たちが手掛けたアート街を観光するのがこのプロジェクトのゴール」

―玄(GEN)さんの今後の夢や目標を教えてください。

玄(GEN)

アート街プロジェクトには、アートであふれる街をつくることで発展途上国の貧困を解消するという目的があります。僕たちがアート街プロジェクトを始動するよりも前に、台湾の彩虹眷村という村でアートが人々の暮らしを救った事例があって。彩虹眷村は住人の高齢化や建物の老朽化から取り壊しの話が持ち上がっていたのですが、一人の住人が建物や道路に絵を描いて、それが話題となったことで取り壊しが中止となったんです。彩虹眷村は今では観光スポットとして人気ですが、このように継続的にお金を生み出せるようになることが重要なのだと思っています。発展途上国に支援するだけでは貧困問題は解決しないんですよね。アート街プロジェクトをきっかけに、そこで暮らす人々が観光をしに来た人に対してどのようなことをしたらビジネスとして成立するのか、今まで考えたことのなかった視点を持ってほしいと思っています。ペンキという高価じゃないものだけで街を盛り上げることができるのだと知ってほしい。そのためにも、ひとつでも多くアート街をつくっていきたいですね。僕たちがアート街をつくる必要がなくなって、プロジェクトメンバーと一緒に観光客としてアート街を巡ることが最終的な目標です。

―プロジェクトに対する周囲の反応はいかがでしょう?

玄(GEN)

貧困とアートを結びつけて想像してもらうことは難しいのですが、取り組みを可視化できるパンフレットや動画を作ることで賛同者は増えています。「アート街を世界中につくったら希少価値がなくなる」と言われることもありますが、土地ごとに異なる歴史や文化があるから、かぶることは絶対にないんです。アート街のことを知った人から「同じ取り組みをやっても良いですか?」と連絡をくることもあります。こうしてアート街の活動が広がっていくのが嬉しいですね。

―挫折を経験しながらも自分自身やアートの持つ可能性を形にする活動を行っている玄(GEN)さんですが、将来を模索している若い子たちに伝えたいメッセージはありますか?

玄(GEN)

僕の場合、「絵しか描けないから」が「絵が描けるから」になったのが大きかったと思っています。消去法で選んだり、世間に合わせて何でも満遍なくできるようになることよりも、自分の強みを活かすことが必要なのかなと思っています。アート街プロジェクトでも、ホームページを作る人がいたり動画を作る人がいたり、それぞれの能力を活かして活動していますね。自分自身と常に向き合い続けたことが今に繋がっているのだと思っています。

―周りの目を気にせずに決めた道を進むことが大事ということですね。今回、玄(GEN)さんには「LUCKAND -Gallery Cafe&Bar-」の扉に絵を描いていただきました。最後に、この絵のテーマを教えてください。

玄(GEN)

この絵のタイトルは「エナジースマイル」です。新型コロナウイルスで多くの人が大切なものや大切な人を失いました。孤独と戦っている人もきっと多いと思います。今もつらい状況が続いているのですが、それはつまり、この状況の対となるものや幸せを知っているということでもあると思うんです。それは本来とても素晴らしいことですよね。今すぐに世界の状況を変えることはできないけど、世界の感じ方は変えられるわけです。暗い状況の中でも、笑顔や夢を持つこと、希望を持つことが活力に繋がってほしいと思い、笑顔の絵を描きました。この絵を見た人にも笑顔が伝搬するくらい、弾けるような笑顔にしたくて。エナジードリンクのように、この場所で笑顔をチャージして明るい顔で過ごす人が増えたらいいなと思っています。

INTERVIEW:カトーハルヒサ
TEXT:大谷夏鈴
PHOTO:カーラ

大嶋玄 GEN

アーティスト
アジア最貧国ネパールやセブ島の貧困地域にアートで溢れる街を制作し、アートの力で観光地化、貧困問題を解決する活動をしている。

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