2017.06.15
輝く飴と職人
PAPABUBBLE 中野店
スペイン・バルセロナ発祥。2005年、東京・中野にフランチャイズ1号店となるアート・キャンディ・ショップをオープンし、現在は全国10店舗を展開中のパパブブレ。光沢があるカラフルなデザインと、口の中でほろほろと溶けていく上品な甘さのキャンディが人気。店頭では職人がキャンディを手作りする姿を目の前で見ることができる。
突然だが、みなさんは“職人”と聞いてどんなイメージを抱くだろうか。暗い、閉鎖的、後継者問題…こんなイメージを抱く人も少なくないのでは。
私事で恐縮だが、LUCKAND編集部が籍を置く株式会社楽日が今年4月に創立10周年を迎えた。記念イベントで配るオリジナルキャンディの製作を依頼すると同時に、多くの人を魅了するパパブブレへの興味関心から取材を申し込んだが、美味しい飴だけではない、日本のモノづくり現場のこれからを考える上でのヒントも得ることができた。
製作工程
3つ並ぶ鉄板のうち、15℃程に冷やされた鉄板に、香りづけされた飴を流し込む。
この時、飴の温度は160℃。
木べらを使い、冷やしていく。
枠いっぱいに広がった黄色の飴に色づけをする。
色ごとにハサミでカット。必要な分量に分ける。
隣の鉄板に移動し、飴を練りながらデザインに合わせたパーツを作る。
この鉄板には革が敷かれていて、70~80℃に保たれている。
壁の大きなフックに飴をかけ、程よい力加減と手さばきで空気を入れていく。
空気を含んだ飴はきれいな白色になった。
この工程が、サクサクの食感を生む。
パーツを合わせ、パズルのように組み上げる。
はさみで刺して空気を抜く。
組み上がった太い棒状の飴の重さは約15㎏。
飴を一気に伸ばすと、一瞬で直径1cmほどになり、艶が増す。
扇風機の設置された鉄板で、適度な長さにカット。
くっつかないよう転がしながら冷ます。
テンポよく商品の大きさにカット。
カットした際に出た飴の粉や、商品にならないものを取り除き完成。13時の制作開始から気付けば約2時間。時間の経過を忘れるほど、洗練された工程だった。
飴作りは、職人がペアになって行う。天候、気温、湿度、メンタリティなどのコンディションが整わないと作ることができないそうだ。依頼したデザインには余白が多く、線も細かいものだったが、息の合った職人の手仕事により、満足のいく仕上がりになった。
今回、職人たちの飴作りの様子を見ていて、冒頭で挙げたようなイメージを抱くことはなかった。店頭で飴作りができるようになるには2年以上の修業が必要だと言っていたし、重たい飴を全身使って操らなければならないのだから、体力的にも厳しい仕事だろう。実際、その真剣な眼差しに話しかけるのを踏みとどまるような場面もあった。しかし、要所でこちらに気を配り、工程を説明してくれる表情はいつも柔和で余裕と自信を感じた。
取材中、「こんにちは!」の元気な声とともに、学校帰りの子供たちが顔を出し、職人たちがそれに答える瞬間があった。聞くと、毎日の立ち寄りコースになっているとのこと。何気なく垣間見ることができた地域密着の証。飴作りに没頭するわけにはいかない開けた空間に身を置くことで、緩急自在な見せ方を身につけている。これも技術と言えるだろう。
「確かな技術」は、日本のモノづくり現場の誇り。職人が寡黙であること、実直であることを否定はしないが、それだけでは続けることが難しい時代になってしまった。スペインのパパブブレ創業者は、「技術を見せないのはもったいない」という思いで手作りする姿をあえて見せるスタイルにしたのだそうだ。このシンプルな発想こそが、日本のモノづくり現場を進化させるためのヒントになる。
「100点満点を出したければ、機械に任せればいい。どこか人間味のあるところがいい。」芯のある職人の技術を間近で見られるパパブブレ。ぜひとも足を運んで、その目で確かめてほしい。飴も、職人も、輝きを放っているはずだ。
PAPABUBBLE 中野店
中野店
営業時間:10:30~21:00
(月・日・祝:10:30~19:00)
定休日:火曜日
〒165-0026 東京都中野区新井1-15-13
03-5343-1286
キャンディの配布方法について
今回製作してもらった職人の技が詰まったキャンディは現在開催中のLUCK’A Inc.主催展示イベント「Band T-shirts Museum」の2会場にて配布。
恵比寿KATA(6/18まで)
奥原宿LUCKAND-Gallery Cafe&Bar-(6/24まで)
Twitter、もしくはInstagramでハッシュタグ #BT_M を付けて投稿し、いずれかの会場受付で確認。
詳しくはBand T-shirts Museum公式サイトにて
http://luckast.com/btm/artist/