2017.05.25

安藤きをく写真展「ひとりごっこ。」-Directed by Q-TA-

安藤きをく(フォトグラファー)、Q-TA(コラージュアーティスト、アートディレクター)

「ひとりにはなれない時代に語られる“ひとり”の違和感」。物語性のあるノスタルジックな作風で知られるフォトグラファー安藤きをくがそのようなコンセプトを基に、2017年3月14日〜4月2日(当初3月26日までの会期予定が好評につき延長された)、「LUCKAND-Gallery Cafe&Bar-」にて写真展を開催した。今回の創作と展示では、安藤自身の強い希望により、コラージュアーティストとしても有名なQ-TAをアートディレクターとして迎えた。そんな展示の様子を取り上げたい。

安藤きをく写真展「ひとりごっこ。」-Directed by Q-TA-
■日時:2017年3月14日(火)〜3月26日(日)→4月2日(日)まで延長
■場所:LUCKAND-Gallery Cafe&Bar-

メインビジュアル

安藤きをくは街の写真を撮影し、それをTwitterに上げていくことで若者を中心に人気が出始めた。独学で写真を学び、2015年に初の個展を開催。2016年、勉強のために半年の休業を経て、本展に至る。今回の展示作品を見てまず感じたのは、これまでの作風とはどこか異なった作品性だ。本格的な再始動ともいえる久々の個展への気迫が伝わってくるかのような、一皮も二皮もむけたクリエイティヴィティを感じさせる。ノスタルジックな日常を捉えてきた彼の持ち味に、Q-TAのエッセンスと思われる非日常性がコラージュされた作品の数々は、まさにコンセプトにある通り、何か目を惹くような「違和感」を浮かび上がらせる。それは、奇抜な構図や被写体に頼って作り込まれた、これ見よがしの違和感ではなく、あくまでも日常性を帯びた写真の一角にひっそりと埋め込まれた違和感、といった様相だ。

本展で展示されていた作品の多くは、展示会場であるLUCKAND-Gallery Cafe&Bar-にて創作されたもの。カフェという日常の場所を逆手に取り、「ひとりにはなれない時代に語られる“ひとり”の違和感」が生み出され、更にその作品が撮影された場所で展示、鑑賞される。そのようなシチュエーションで作品を見ていると、全てがリンクしていきながらも、作品の持つ力によってその繋がれた糸が切られていくような、摩訶不思議な感覚をおぼえる。

また、本展ではその展示方法も作品の一部であるかのように、来場者を日常と非日常の狭間へ誘っていった。そこではとりわけコラージュアーティストらしい、Q-TAによるディレクションと思われるエッセンスが光っていた。

当初2週間の予定をしていた会期は、来場者が多く好評を博したため、急遽3週間に延長された。この延長期間では更に、安藤自らがしたためた創作メモが作品ごとに追加された。単に会期を延長するのみならず、制作話や作品のポイントなどを敢えて見せることで、作る側に一歩近付いた展示へと変化させたのだ。

ネクストステージに向かわんとするクリエイターが、自身の敬愛するクリエイターの創造性を吸収し、大きく飛躍していく貴重な個展に映ったこの「ひとりごっこ」。本展を経て今後、安藤きをくの創造性はどこに向かっていくのだろうか。

なお、この展示にてLUCKANDとコラボした共創プロダクトが、LUCKANDのオンラインショップにて販売中です。

安藤きをく

1989年 鹿児島県生まれ。SNSに突如現れた謎のフォトグラファー。中肉中背の見た目とは裏腹に、物語性のあるノスタルジックな作風で人気を博している。現在は株式会社バケットにて物撮りを中心にカメラを握っている。趣味はゲーム・読書、とのこと。
http://kiwokuand.tumblr.com/

Q-TA

アートディレクター / コラージュアーティスト
シュルレアリスムを独自の解釈で表現するファッション性の高いポップなコラージュ&ビジュアル作品で、GUCCIのアートプロジェクト「#GucciGram」や、ディズニー映画「Alice Through the Looking Glass」のInstagramキャンペーンへの作品提供をはじめ、アパレルブランドとのビジュアルコラボレーションやCD、雑誌、装丁、装飾デザインなど国内外で活躍する。
https://www.q-ta.com

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