2019.11.28

吉田ユニ展「Dinalog」

吉田ユニ(アートディレクター)

広告やCDジャケット、映像、装丁など幅広いジャンルで活躍中のアートディレクターの吉田ユニ。彼女の大規模な個展「Dinalog」が、12月1日(日)まで東京・原宿のラフォーレミュージアム原宿(ラフォーレ原宿6F)にて開催中だ。同所での個展は、2014年に開催された初個展「IMAGINATOMY」以来、実に5年ぶり。「彼女のあの面白いアイデアはどこから生まれてくるのだろう?」それが気になって仕方がなかった私たちは、その源を探るべく会場へと足を運んだ。
展示内容は、これまで発表してきた数々の作品群に加え、その創作ノートとも言えるラフスケッチや制作物などのメイキングまでをも惜しみなく披露するというもの。まさに「吉田ユニの断面」が至るところから伺える内容だ。以下では、そんな吉田ユニの頭の中を垣間見ることができる貴重な同個展の模様をお伝えしたい。

吉田ユニ展「Dinalog」
■日時:2019年11月15日(金)~12月1日(日)
■場所:ラフォーレミュージアム原宿(ラフォーレ原宿6階)

展示会場に一歩入ると、「これから吉田ユニの断面を見せますよ!」と言わんばかりに、メインビジュアルの4カットが目に飛び込んできた。そして、もう一歩中に入ると…数えきれない程の作品と、会場中央にはラフスケッチや小道具などメイキングの数々が収められたショーケースを配置。実際の撮影で使用したウィッグも吊るされている。まさに「吉田ユニワールドへようこそ!」という趣きだ。

吉田ユニ作品の驚くべき点は、コンピュ―タグラフィックなどを用いた合成ではなく、ほとんどが実物を制作して形にしている点。入口付近にある「the MOTHER of DESIGN meets YUNI YOSHIDA “PEEL”」(2019年春に丸の内ハウスにて開催された新作展)のビジュアルを見ただけでも、それが伝わってくる。同作品は、本物のフルーツをカットしてモザイクを実物で作っているのだが、ラフスケッチやフルーツをカットしてはめ込んでいる制作過程の写真を見ると、「こんな血の滲むような作業を…」と驚く方も多そうだ。そんなふうに、「これを実物で作るなんて…」と尻込みしてしまいそうなものでも、妥協することなく作り上げるところが吉田ユニ作品の個性であり人の胸を打つ要因なのだろう。全力投球のこだわりはどれを見ても圧巻だ。

他にも彼女がアートディレクションを務めた星野源やCharaのCD・DVDジャケット、渡辺直美×shu uemuraのリップの広告、野性爆弾くっきー!のイベント「超くっきーランド」のアートワークなどがあり、展示内容も盛り沢山。ひとつひとつ見るたびに現れる、独特の視点から生み出されるアイデアのユニークさは、思わずクスッとさせてくれるものばかりだ。

そして、この展示の見所は、何と言っても会場中央のメイキングが収められたショーケースだ。鉛筆で描かれたラフスケッチの線からは、とても丁寧にアイデアを紡ぎ出しているのが伝わってくるし、制作物、制作過程を切り取った写真や映像からは、緻密さと制作にかける吉田ユニの情熱が伝わってくる。それはまさに、いつもは見られない秘密の部屋を覗いてしまったような感覚にも似ていた。

そんなショーケースは、断面を見せたダンボールで出来ており、ショーケースまで「断面」を意識した作りになっているところにも、吉田ユニの“トコトンこだわる人”という面が表れている。細部までこだわっている作品が盛り沢山なだけに、ひとつひとつじっくりと見入ってしまい、気づいたら何時間も会場にいた…!なんていう方々も多そうだ。それこそ本当に何時間でも居たくなる見応え抜群な個展につき、早めの時間から行き、じっくりと拝観することをオススメしたい。

そんな貴重なものを見せてくれているにも関わらず、この個展の入場は無料。ものづくりに興味のある人はまさに必見の個展と言える。そして、普段は美術館に行かない人でも、原宿に立ち寄る際はぜひ足を運んでいただきたい。きっと、「アートって楽しい!」「吉田ユニの頭の中を見てみたい!」と、ワクワクが止まらなくなることだろう。

また、会場では2007年から2019年までの選りすぐりの作品をまとめた作品集「YUNI YOSHIDA WORKS 2007-2019」の先行販売やポストカードの販売も行なっているので、拝観後、ご自宅でも吉田ユニワールドを堪能してはいかがだろうか? 吉田ユニの「ユニ」は「ユニーク」からきているそうなのだが、その名の通り、これからも彼女が生み出すユニークなアイデアからは目が離せそうにない。

TEXT&PHOTO:LUCKAND編集部

吉田ユニ
1980年生まれ、女子美術大学卒業後、大貫デザインに入社。宇宙カントリーを経て2007年に独立。
これまで、ラフォーレ原宿のキャンペーンビジュアルや、星野源、CharaなどのCD・DVDジャケット、渡辺直美展のビジュアル、野性爆弾くっきー!のイベントへのアートワーク提供。KIRIN、LOWRYS FARMなどの企業やブランドのビジュアルを担当するなど、幅広いジャンルで活動している。ファッション誌『装苑』では「PLAY A SENSATION」を連載。多数の女優やタレントとコラボレーションし、毎号驚きにあふれた作品を生み出している。
http://www.yuni-yoshida.com/

 

吉田ユニ展『Dinalog』
■日時:2019年 11月15日(金)~ 12月1日(日)
■場所:ラフォーレミュージアム原宿(ラフォーレ原宿6階)
■11:00〜21:00(入場は20:30まで)
■入場無料
https://www.laforet.ne.jp/museum_event/YuniYoshida/

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