2019.08.09

Senda Hana個展(*No Title)

Senda Hana(イラストレーター)

日常に潜むかわいいおじさんを描き続けているというSenda Hana。これまでも渋谷のTHE LOCALにて二度展示を開催したことがあるが、今年も三度目となる同じ場所で個展を開催した。その展示レポートをお届けする。

Senda Hana個展(*No Title)
■日時:2019年7月16日(火)〜7月29日(月)
■場所:THE LOCAL  https://thelocal2016.com/

メインビジュアル

かわいいおじさんばかり描いている若い女の子のイラストレーターがいる。
30代半ばを越え、中年に差し掛かりながらも自分がおじさんとはまだ心から信じきれていない筆者は、知人から教えてもらった彼女によるおじさんの絵をウェブでいくつか見てみると、何か引っかかりを覚えた。おじさんへの移行期の真っ只中にいて、自分はこの展示に行かなければならない、と。7月16日〜29日に、渋谷から宮益坂を登った246号線沿いに位置するTHE LOCALというコーヒースタンドで、その展示は開催されていた。

このTHE LOCALは、GOOD COFFEE(https://goodcoffee.me/)という、国内外のスペシャリティコーヒーを提供するコーヒーショップ情報を紹介したオンラインガイドブックの実店舗版、というコンセプトで立ち上げられたアンテナショップだ。地方にも素晴らしい焙煎所やコーヒーショップがあり、それらのコーヒーをここ東京の真ん中でも提供したい、という思いで2016年3月から営業されている。

そしてそのTHE LOCALのスタッフが、コーヒーに加えて自らが良いと思ったものを紹介していくハブになりたい、という想いで、これから長く活躍していきそうな若いクリエイターを中心に選び、年中途切れることなく展示を開催している。2週間単位で開催される展示だが、今年いっぱいは全て埋まっているほど、積極的に取り組んでいるようだ。

そんなTHE LOCALで過去二度、Senda Hanaはおじさんの作品だけで展示を開催し、今回も当たり前のようにおじさんの作品による個展だ。タイトルは創作の枠を縛ってしまうからという理由で、つけられていないそうだ。店内にはキャンバスのみならずタペストリーや、糸鋸で型どったオブジェや張り子などの立体物も展示されている。異なる表現方法でアウトプットされたその全てに、愛らしいおじさんが描かれているのだ。

本展ではタイトルもなく、普段からもSendaはあまりコンセプトなどに沿って創作をすることが少ないようだ。ただ、一つ強いていうと、今回の作品は自身がハワイに行ったときに見た、おじさんからインスピレーションを得たそうだ。コンセプトはとにかく、おじさん、なのだ。

「部屋に飾ってあったらほっこりしそうな絵が描きたい」

本展におけるコンセプトや普段の創作活動について、様々な質問をするが言葉少なげにそんなことを呟いたSenda。彼女にとって、おじさんは一番愛おしいと思う対象だから、という理由だけでおじさんを描き続けているそうだ。若い女の子を探すおじさん、なで肩のおじさん、腹の出たおじさん、おばさんと一緒にいる幸せそうなおじさん、スケボーに乗るおじさん、様々なおじさんに囲まれながらもその全てに愛が込められている。

本展によって、おじさんになっていくのも悪くないと思え、おじさんになりきれない自分もいっそのこと、ここに描かれるような愛しいおじさんに成り切ろう、と思わせてくれた。この展示をみて、きっとそんなおじさんロードを歩むための背中を押してもらいたかったのだろう。全てのおじさんにとって、未来ある展示であった。

TEXT:LUCKAND編集部

【Senda Hana】
静岡県浜松市出身。東京都在中。日本大学芸術学部デザイン学科卒。
主に日常に潜むかわいいおじさんを描いている。最近ではBEAMSとコラボしたり食品のパッケージデザインなどをしたりと多方面で活躍中。
https://sendahana.tumblr.com/

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