2017.07.27

小見山峻 写真展「swindle」

小見山峻(フォトグラファー)

ファッションフォトやポートレートをはじめ、SuchmosやSANABAGUN.など様々なバンドの撮影と、幅広く活動をするフォトグラファー・小見山峻の写真展が2017年5月30日(火)〜6月11日(日)に開催された。「騙す」や「詐欺」を意味する「swindle」をタイトルに据えたこの写真展は、Tシャツに作品を落とし込んだ形で展示をするという挑戦的なものであった。その写真展の様子を取り上げたい。

小見山峻 写真展「swindle」
■日時:2017年5月30日(火)〜6月11日(日)
*レセプションパーティー:6月2日(金)18時〜21時
■場所:LUCKAND-Gallery Cafe&Bar-

メインビジュアル

嘘に救われたことはあるだろうか? その嘘というのは鼓舞であったり、根拠のない自信であったり、現実逃避であったりする。時にそんな「嘘」に騙されることで救われることもあるという経験と、自分の感覚によって映し出された写真も第三者にとっては異なって見えるであろう「嘘」なのかもしれない、という仮定をもって、小見山峻はこの写真展で価値のある「嘘」を提示しようとした。そういった想いから、「swindle」(=騙す、詐欺)というタイトルを冠した写真展が開催された。

昨今ではそのバンドの勢いからもSuchmosのカメラマンとして広く認知されている節はあるが、それはあくまでもフォトグラファーとしての小見山峻を僅かに切り取った、小さな一塊の肩書きに過ぎない。元々ファッションフォトやポートレートを多く撮ってきた小見山峻の個展「swindle」は、その情報が解禁されるやいなや、Fashionsnap.com、HOUYHNHNM、i-D JAPANやその他多くのファッション系メディアに取り上げられ、その注目度の高さを表していた。

そんな彼らしく、今回の展示はTシャツをキャンバスにして作品を落とし込んだ。作品を自分自身の一部にしてもらい、身に纏ってもらう。そのために1枚のTシャツにつき1作品をプリントし、50作品=50枚のTシャツが展示されたのだ。数点を除き、その「作品」たちは展示中に受注販売された。

6月2日に開催されたレセプションパーティーを始めとして、連日人がごった返すほどの来場客で賑わい、多くの人々が一枚一枚作品のプリントされたTシャツをじっくりと見ていった。そこには50種類ものTシャツの中からどのTシャツを買おうか悩んでいる時間も含まれているのだろうが、結果的に時間をかけて一つ一つの作品が鑑賞されるという、素晴らしい写真展になっていた。

また、通常のプリント&額装された作品が写真展で販売されるであろう数量からすると、異例の数量のTシャツ=作品が販売されたようだ。Tシャツという形でみなが作品を持ち帰り、それを纏って街に出るのだ。そして、街が展示場へと変わる。写真という作品がそのように享受されている様を想像すると愉快でたまらなく、こんなに作品冥利に尽きることはないのではないかと、感じた。

この展示を実施したことから、作品を届けるという過程について、恐らく小見山峻本人が一番強く何かを感じたのではないかと思われる。作品を創作することに関しては揺るぎない価値観と感性を基に行っている彼だからこそ、今後はそれらをどのような形で届け、伝えていくのかが気になるところだ。

READ HIS INTERVIEW : 「小見山峻が撮る、写真と音楽と言葉と」

なお、8月4日(金)より、小見山峻にとって初の西日本における企画展「【homemade journey】小見山峻 × Homecomings」が、8月4日から京都・三条のThe Millennialsで開催される。修学旅行以来の京都訪問だったという小見山を、京都在住のHomecomingsが喫茶店やレコード店、老舗銭湯といったローカルスポットに案内する様子を捉えた作品を展示する。

YouTubeでは小見山峻とHomecomingsが京都の街を紹介する様子などを収めた映像が先行公開されている。

Homecomings × 小見山峻-KYOTO LOCAL STORY-

小見山峻

神奈川県横浜市出身。ファッションフォトやポートレートをはじめ、SuchmosやSANABAGUN.など様々なバンドのライブアクトや夏フェスの撮影など、幅広く活動。文芸思潮エッセイ賞 社会批評賞佳作受賞(2013)。グループ展「A.W.P Selection 2016」 ‐次世代を担う写真家たち‐ at リコーイメージングスクエア銀座(2016)、グループ展「Nobody Knows」at 表参道ヒルズ ROCKETギャラリー(2016)などで展示。また、完全無料の写真冊子、”depth charge issue”を自費出版で発行している。
http://shunkomiyama.com/

RECOMMEND