2017.05.09

継承すべき日本職人の技

RADWIMPS「Human Bloom ネックレス」「Human Bloom ピアス」職人インタビュー

アニメーション映画『君の名は。』の音楽全般に携わり、これまで以上に幅広い層にその存在を知らしめた、ロックバンドRADWIMPS(以下 : RAD)。その全国ツアー『Human Bloom Tour 2017』が各所大盛況のなか間もなく千秋楽を迎える。今回も様々なツアーグッズが作られ、中でも「Human Bloom ネックレス」と「Human Bloom ピアス」の登場は目を惹くものがあった。
RADらしいこだわりのある逸品に仕上がっているこれらのグッズ。それを具現化できたのも職人たちの手による緻密な技術があってのこと。音楽のみならず、良質なモノを届けようとするRADの精神が日本職人を動かしたと言っても過言ではない。
今回はそんな「ネックレス」と「ピアス」の職人たちに、LUCKAND公認リポーター『ケイシ』に、それぞれの想いについて訊いてきてもらった。

「良質な国産品のあり方を広げていくには、若い力は重要」(金属加工工場2代目代表・鈴木氏)

━鈴木さんは金属加工業をどれぐらいやってるんですか?

鈴木

かれこれ35年ぐらい前から携わっている計算になります。最初はこれとはまたちょっと違った、金属の穴あけなどの小さい機械から入ったんですけど、初めて機械に触れたのは小学校3~4年生の頃でしたね。

━えっ!?小学校の頃から…ですか!?

鈴木

当時は手伝うとお小遣いがもらえたんで、それ目当てでやってました(笑)。と言うのも元々、私の父がこの会社を設立したんです。私はその2代目で。刻印するような大きな機械に触れ始めたのは高校生の頃からでしたが、小さい頃からモノづくりが好きだったんで、自然な流れで今に至る感じですね。

━ちなみに会社が作られたのはいつごろですか?

鈴木

昭和49年(1974年)です。私が社長で弟が専務をやっています。主な役割としては、私は現場周り、弟はパソコン等の事務処理ですね。

━このお仕事を選んだキッカケは何だったのでしょうか?

鈴木

高校卒業後2年ほど自由に遊んでいたんです。そんな頃、父から「仕事が忙しくなってきたから戻ってこい!」と言われて。本格的にやり出したのはそれからですね。以来21歳の頃からずっと一筋で続けています。好きで続けていたら、気がついたら継いでいた。そんなところです。


━始めた頃から今とでは何が劇的に変化しましたか?

鈴木

仕事の発注が海外にいってしまうことが多くなりました。物が売れない時代になり、それに比例するように発注数も減少してきて。仮に生産数が多いものでも、コストの面で中国に仕事を持って行かれてしまったり。仕事をし始めた頃は1回につき1万~5万個の発注が来ていたものも、最近では数千個レベルにまで下がってしまっていて。少ないものだと数百個の場合もありますからね。

━コストの関係上、みなさん安く作れる海外生産へと流れてしまったと。

鈴木

大半がそうですね。だけどそんな中でも、逆に中国製のものを避け良質なモノを求め、国内の仕入れ値に基づいた売り値を設定して販売する方々もおられます。そんなモノづくりにこだわりのある方々が国内で生産をする図式に完全になってきてるかな。

━海外生産への対抗はやはりむずかしいものなのでしょうか?

鈴木

売る側が中国生産の安い商品を仕入れて、自分たちの利益を確保しようとする。国内でも末端は安いけど、仲介が入れば入るほど高くなっていくので、そこで利益を確保しようとすると、結局国産品は見合わなくなってしまうのが現状です。とは言え、工場は決して多人数でやっているわけではないので、発注数が増えすぎると小さな工場では逆にまかないきれない場合もあります。

━ちなみにこの機械(ボルスター)だと1時間あたりの生産数はおよそどれぐらいなのですか?


鈴木

型が大きいものだと1000個前後ですね。なので数十万個の発注が来てしまうと、機械がその仕事だけで埋まってしまうんです。そうなると他の仕事への影響も考え、大量発注を受けることが出来ないんです。納期に融通がきけば良いのですが、最近は短納期の仕事が多くてね。クオリティの面では絶対に国産の方が良いと分かっているのに…。

━やはり日本人の技術力は違いますか?

鈴木

違いますね。日本人ならではの感覚があるというか。特に中国製はサンプルと量産では全然違う場合があります。中国で粗悪品に当たってしまい、国内で作り直すという二度手間は何度も耳にしたことがあります。今では海外の技術も上がってきてるので悪いところばかりではありませんが、本当に良いものは100の内、1つぐらいかな。今後海外のクオリティがアップしていくと日本製の需要は更に下がっていくかもしれませんね。

━ちなみに、国内からの依頼はどうですか?

鈴木

北海道から九州まで、幅広いところから依頼があります。うちの評判を聞いて尋ねてくる人は商品を丁寧に作りたいと思って来てくれる方が多いので嬉しいです。

━細かいパーツが多いので、生産管理や検品、出荷業務も大変そうですね…。

鈴木

そうなんです。スピードも求められる時代になったので、スマホやパソコンを自在に扱える若い力が今は必須ですね。

━工場には若い方も働いてましたね。

鈴木

最年少は20歳で、中心は40歳前後です。中にはもっと高齢な人もいます。幸いにもここは若い人が多いですが、業界的にはやはり年齢層は高いです。

━ちなみに若い方はどのようなルートで入社を?

鈴木

ほとんどが知人の紹介やハローワークですね。

━アルバイト情報誌や求人サイトなどではしないのですね?

鈴木

そうなんですよ。

━今後はどのようなことが課題になっていくと思われますか?

鈴木

私のところは人材が揃っているので大量発注も受けられますが、中には夫婦二人だけでやってるような小さな工場も多く、そうなると大量発注は受けられない現状もあります。やはり若い力は必要ですね。維持をするには仕事自体がないと成り立たないので、国産の良さをどう広めていくか。その辺りが今後の我々の課題であると思っています。

━この技術が若い人たちにしっかりと継承されることを期待しています!



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