Art Direction & Design : 石原美里
Photographer : 西槇太一
Booklet Photographer : 岩淵直人

このLUCKANDでのPICKAのカメラマン対談でも登場いただき、当媒体の撮影も多く手掛けてくれている西槇太一氏。彼がこのAmelieの最新アーティスト写真を撮影し、今作のジャケットの基となる写真も撮影した。

アーティスト写真の方はモーションの秒数を上手く使い、背景に流れを作り出し、流れる時間の中、しっかりと自身を保っているような、今作に通ずる部分を上手く引き出している。

対して今回のジャケット写真は、その4人それぞれの顔を間近に撮り、それをモンタージュではなく、あえて4枚レイヤーで重ねたものを制作。よくよく見ると4人それぞれからなると分かるのだが、遠目から見ると、ボーカルのmickがややぼんやりと映っているような、その塩梅も計算に入れての、あえてのデザインとなっている。
で、ポイントはその4人の写真を重ねたものがジグソーパズルになっているところ。実際にA3サイズぐらいのパズルを作成し、その幾つかのピースを外し、その実物をあえて撮影しているのがこのジャケットに当たる。足りないピースが、いかにも「誰だって完璧じゃないし、その完璧さを探し、追い求めるかのように生きている」、そんな彼らが伝えたがっているメッセージのように映る。

実は、このパズル、2つ制作。そのうち一つはメンバーの某氏が再度完成させようと一度バラバラにしたものの、実際は白い部分が多くを占めており、思いのほか細かい為に、未だパラパラになったままだそうだ。誰かジグソーパズルに自信のある方は一度、完成させるべく名乗りを上げてみてはいかがだろう？

加えて、ブックレットの方も歌詞をクラシコトレーシングっぽい紙に印刷。それが真ん中の綴じ目に対して、左右対称的に印刷されており、1ページに1つづつの歌詞が掲載されている。それが反対側からも反転して見える工夫もされていたりもする。

Amelieはこのニューミニアルバムにて、あえてある意味自分の存在証明とも捉えられる、背負うにはとても重みのある言葉でもある「アイデンティティ」をそのタイトルに掲げた。

アレンジ等も以前に比べ更にこだわり、ライヴ観はしっかりと保持しつつ、色々と細かいところで細かく丁寧なアレンジが施されている点も耳を惹く今作。その辺りは自身でも、「これまではライヴに向けて曲を作っていたが、そうではなく一つの音楽作品として成り立つものを今回は作ってみたくて挑んだ」(ボーカルmick)と語った。
また、「実はAmelieって元々開始の頃は繊細な部分も多々あったんです。それをここに来てもう一度改めてやってみようと。もちろんメッセージ性はその時とは変わってはいますが、その上で、「今そのようなことをやれたら強いだろうな…」って要素が入り混じったものになりました」(ギター直人)とも。

バンドサウンドとして成立させつつ、それぞれの音やその役割、あと余計な音を入れ過ぎない。特にその辺りによりこだわった感のある今作。それほど音数を詰め込まなくても、各音が分離し、存在感があって聴こえ、各々の音が際立って聴こえているのも特徴的だ。

まさに<これが本質だ!!>と明示しつつも、それらは時や生き方によって自然と変わっていくもの、移っていくもの、うつろいでいくもの等も含み、その自己の存在証明も多岐に渡り表してくれた感を多分に持った今作。キチンと明日や次へと踏み出せる一歩になるバイタリティと共に我々の今後を明るく照らしてくれるような作品がまた1枚手元に増えた。

Amelie「バウムクーヘン」　MV

Director : 撮影 / 監督：ハヤシサトル

このLUCKANDでも古くは写真撮影やモデル等でも所縁の深い、カメラマン、モデル、映像作家でもあるハヤシサトルがディレクションを務めた同曲のMVがこちら。楽曲の方は作曲もバンド名義となっており、これはスタジオでメンバー全員によるセッションしながら作っていったからだとか。
曲調的にも若干のウェットさと、これまでに無かった手触りも含め、従来の彼らには無かったタイプの楽曲と称せるだろう。

MVの方は8mmで撮ったかのようなも、上手いモサっとしたアナログなフィルムのような粗い粒子の手触りと、ハレーションを含む光の取り入れ具合が伺え、それがより日常感とマッチ。日々の暖かさや温もりも合わせ、切ない内容ながら、それがどこかいい想い出感として醸し出されており、どことなく日々の記録映画のように映るのも興味深い。

TEXT ： LUCKAND編集部