＜完全生産限定盤＞

＜通常盤＞

Art Director & Designer : 小野勇介(HAKUHODO)
Photographer : 青山たかかず

ブリスターパックに収納されたオリジナルバンダナ付属の完全生産限定盤。通称「汗ジャケ」。CDケースいっぱいに付いた水滴。正確には水滴フィルムなのだが、指で触れると水滴の厚みを感じる。

2018フジテレビ系サッカーのテーマ曲「カタルシスト」。野田洋次郎がスポーツをテーマに曲を書き始めたことから汗ジャケ制作の戦いは始まった。アートディレクター・デザイナーを務めた博報堂の小野勇介は＜スポーツ＝汗＞を発想の起点に「ジャケットが汗をかいていたら面白いでしょう。」とCDケースへ実際に水滴を垂らしてみた。確かに面白い。しかし面白いアイデアほど実現させることは難しい。ましてや量産ともなると、コストやスケジュールなど無視出来ない課題も多い。幾度も問題点とぶつかり、ひたすら試作を繰り返す。RADWIMPSのファンであれば、RADスタッフのブログでこの汗ジャケの秘話をご存知のことだろう。では不可能と思える局面に立ち向かった時、どれだけの人が諦めずゴールへ進めるだろうか？「CDが売れない!!」と騒がれて続けている昨今、これだけCDに心血注ぐ人々がいることに筆者は魂が震えた。

女性モデルの顔に水滴が浮かんでいるジャケットにも注目したい。フォトグラファーは国内最大級のビジュアルソリューションカンパニーamanaの青山たかかず。特殊な機械で水滴を飛ばし、合成も加えながら仕上げたジャケット。水滴のしずる感とモデルの肌の質感とのコントラストは絶妙だ。中には「大手が携わればそりゃ金だってかけられるし、良いもの出来るでしょ。」と斜に構える人もいるかもしれない。勿論大手だから可能なことは沢山ある。だが携わる者がいかに探究心を持ち、労力をかけ、愛情を注ぐかは別の話だ。RADWIMPSのCDが売れているのは勿論楽曲の良さに他ならないが、今作はアートワークという形でクリエイティビティを形にする人達のパワーを感じる逸品だ！

野田のラップでこの曲は始まる。エッジの効いたベース・ミュージックのAメロ、 英詞のBメロ、ギターの歪みを堺にRADらしいポピュラリティが開放されるサビ。上記にも記載した通り、2018フジテレビ系サッカーのテーマ曲「カタルシスト」。Aメロでは「今は御託並べずにがむしゃらに勝ちにいく時」と歌い、サビでは「誰かを負かしたいわけじゃない」と歌う。 一体＜勝負＞とは何か？2011年、NHKサッカー放送のテーマ曲になった「君と羊と青」とは全く違うテイストの今作。ビートルズがアイドルからアーティストへ変わったように、RADは7年の時を経て同じサッカーというテーマをより深いサウンドクリエイトとメッセージで表現している。

c/wの「HINOMARU」が物議を醸している件について述べるつもりはない。人は生まれ育った環境で信念は違うものだし、ここでは音楽という＜カルチャー＞として語りたい。BPMが大きい楽曲が増える中、バラードとも違うこのリズムの大きさは実に新鮮だ。凝ったトラックの「カタルシスト」とは違うシンプルな構成。和のテイストを感じる鈴の音と、歪むエレキギターの音色が妙にマッチしているのも面白い。全くカラーの違うこの二曲に野田の楽曲作りの振り幅の大きさを感じた。

RADWIMPS「カタルシスト」

Director : 柿本ケンサク

未踏の近未来都市の映像に「ブレードランナー」を思い出したが、もっとイリーガルな匂いがするエキセントリックな世界。
監督は「狭心症」や「五月の蝿」でもタッグを組んだ柿本ケンサク。 シーンはサビで雲に包まれた屋上へ移り壮大なダンスシーンへ。野田の動きが一瞬ウォールアートのように映し出される細かい演出や、ギラついた照明の下でのダンスシーン、ゆがみを加えた人物のトランジションエフェクトなど見どころが多い。
様々な若きアーティストも参加し、まるで映画のワンシーンのような仕上がりになっている。