2019.04.17
作者亡き後も存在は生き続けていく
蟻坂歩美（デザイナー） / 小川博永（つばき・ベース） x おかもとなおこ（つばき・ドラム）
ボーカル＆ギターの一色徳保がこの世を去って2年。今も多くのファンやミュージシャンたちから愛され続けているスリーピース・ギターロックバンド、つばき。一色の存命中の活動は、今も多くの者の胸の中に残り続け、遺した楽曲の数々は聴き継がれ続けている。また、今も彼と同時期に活動を共にしていた盟友たちによる、つばきの楽曲を歌い継ぐユニット「つばきフレンズ」を始め、彼らに影響を受けバンドを始めた若いフォロワー的なバンドも出現。未だその影響や軌跡は、私たちの中にしっかりと根づいていたままだ。
一色がこの世を去って三回忌となる今年。つばきフレンズが結集し、4月18日に下北沢CLUB Queにて、ドラマーおかもとなおこの生誕祭ライヴ「正夢になった夜～おかもとなおこ生誕祭～」が、一色の命日にあたる5月9日には彼の故郷・愛媛県松山のDouble-u studioにて、「正夢になった夜」が開催される。それに歩調を合わせ、つばきがこれまでに制作したグッズをはじめ、その他バンドにまつわる貴重なアイテムが展示される、つばき展「正夢になった時」が2019年4月16日（火）～4月21日（日）、LUCKAND-Gallery Cafe&Bar-にて開催。
このつばき展開催に際し、これまで数多くのつばきのグッズや作品のアートワーク、MVの一部も手掛けてきた蟻坂歩美、それからつばきのメンバーのベース小川博永、ドラムおかもとなおこの両氏に、グッズやアートワークのモノづくりに関するインタビューを行った。つばき展の更なるガイドはもとより、これからもつばきが聴き継がれ、語り継がれていく、その導きの一助になれればと願っている。
【つばき ベース小川博永、ドラムおかもとなおこ・インタビュー】
「つばきは気づけば自分の人生の大部分になっていた。やはり宝物であり、これからも大事にしていきます」（おかもと）
━まずは今回、つばき展「正夢になった時」が開催されるにあたっての感想からお聞かせ下さい。
おかもとなおこ(以下、おかもと)
とても嬉しいですね。今までのグッズを見ていると、その時のライブや当時の雰囲気を思い出して胸がいっぱいになってきます。
小川博永(以下、小川)
僕の場合は、ずっと一貫して、つばきのグッズ担当としてデザインにこだわってきた自負があるので、今回これだけのものが揃うのはやはり感慨深いです。
━そんなグッズの数々もデザインしてきたのが蟻坂歩美さんですが、彼女との最初の出会いって覚えていますか？
おかもと
当時所属していた音楽事務所のイベントを手伝っていたスタッフさんとしてお会いしましたのが最初でした。つばきが事務所から独立して、自分達でやり始めた時に作ったシングル「花が揺れる/最低な気分、雨に打たれて」のジャケットを依頼したのが正式には初めてだんじゃないかな。
小川
いや、確かそれよりも何年か前にTシャツのデザインをやってもらったのが先だったよ。
━蟻坂さんと長くお仕事をされ続けてきているポイントって何でしょう？
おかもと
ポップなところ。それから、こちらの無茶振りにも対応してくれる柔軟さ。あとは、お酒の席で話した事など日常の会話を広げてデザインに繋げてくれるところ、かな。
小川
彼女の場合、つばきのファンに近い感性でつばきの音楽を表現してくれていますからね。その上、つばきチームの一員として俺らの音楽やパーソナリティを理解してくれている。まずは「蟻坂に依頼する」のがファーストチョイスになってますから。
━ちなみに蟻坂さんとは、どのような流れでデザインが決定していくのですか？
小川
いつもはなんとなくテーマ的なものを伝えたり、伝えなかったり……でも基本は丸投げです（笑）。むしろ逆に彼女の方から幾つかパターンをもらって、そこからあーだこーだと膨らましたりすることが多いです。
おかもと
いつもグッズは小川くんと蟻坂さんが中心になって進めてくれますが、今回のサコッシュは初めて蟻坂さんと私の2人で進めたんです。サコッシュに刺繍をしたくて、大まかなイメージと予算を伝えて作っていきました。
━依頼する際にはどのような伝え方を？
おかもと
アルバムのタイトルや、「何の為にライブをするか」を伝えたりして、そこに蟻坂さんイメージも合わせてデザインしてもらうパターンが多いです。
━かつてはつばきの「声の行方」のMVも蟻坂さんが手掛けたことがあるんですよね？
おかもと
そうなんです。その際の作品も、全部映像ではなくて、あえて写真や蟻坂さんの描いた絵を組み合わせたMVでした。途中出てくる色んな絵やメンバーの動きがとても印象的でしたね。
小川
そうそう。曲はロックで切ない印象なのに、映像ではとてもポップに仕上がっていてよりキャッチーなイメージに仕上げてくれました。ポップなセンスはつばきよりもあるかもしれない（笑）。
━そんな中、何が最も印象に残っていますか？
おかもと
うーん……。初めて一緒に作った「声の行方」のMV。あとは、ベストアルバムの『ALL TIME BEST』のジャケットですね。
小川
僕も「声の行方」のMVと、あとはそれがアルバム『夜更けの太陽』のジャケットと連動していたんですよね。その2つです。
『夜更けの太陽』ジャケット写真
━間もなく久しぶりのつばきフレンズのライヴが観れます。まずは4/18の「正夢になった夜」のおかもとなおこ生誕祭への意気込みから教えて下さい。
おかもと
一色は、「ピンチになると誰かが助けてくれて、俺はラッキーだ。だから皆んなにはとても感謝している」と生前よく言っていました。私も最近特に同じ事を思うんです。このイベントを通して出演者やお客さん、皆さんに、そんな感謝の気持ちを伝えられたらと思っています。
━一色君の三周忌にもあたる5/9には彼の地元・愛媛でのつばきフレンズのワンマンもあります。そこへの意気込みを。
おかもと
三回忌ということ、一色が大事にしていた地元でワンマン出来ること。仲間たちがまた集まってくれたことに本当に感謝しています。みんな次にいつ集まれるか分からないので、是非松山でのライブを皆さんに観て頂けたらと思います。
小川
松山でのライブはいつだって特別でした。今回もきっと特別な夜になるでしょう。つばきの音楽を鳴らせることに感謝して、一色が羨ましがるような夜にしたいですね。
━ちなみに今やつばきはお２人にとってどのようなものであり存在であるんですか？
おかもと
気づけば自分の人生の大部分になっていました。やはり宝物です。これからも大事にしていきます。
小川
青春そのものです。
━最後にファンの皆さんへメッセージをお願いします。
小川
つばきの歴史をグッズで振り返る機会は滅多にないですからね。個人的にも、一堂に会するグッズたちを見れて感慨深いです。メンバーもタイミングを見て顔を出そうと思ってますので是非お越しください！
INTERVIEW&TEXT：LUCKAND編集部
つばき展「正夢になった時」
＜会期＞2019年4月16日（火）〜4月21日（日）
OPEN : 11:30～20:30（20:00 L.O.）
＜場所＞LUCKAND-Gallery Cafe&Bar-
＊入場無料（ワンオーダー制）
蟻坂歩美
デザイナー/モーショングラフィックス 株式会社etooto 取締役
幾つかのCG会社を経験後、フリーランスを経て、2016年に株式会社etooto(エトオト)を設立。
紙デザインから映像制作まで、媒体に関わらず幅広く仕事に携わっている。
https://www.instagram.com/ari_ari_ko/
つばき
2000年4月、大学進学のため上京していた一色を中心に「椿」結成（のち「つばき」へと改名）。2005年、メジャーデビュー。2008年からは活動の場をインディーズに移し、精力的に活動を展開。つばき結成10周年である2010年は毎月10日に「つばき10th Anniversary “正夢になった夜”」を開催。2010年12月、一色の脳腫瘍が発覚。手術、病気療養のため、つばきの活動休止を発表。活動休止期間中、仲間たちが集まり、つばきフレンズというプロジェクトが始動。2013年6月、つばき活動再開。結成15周年である2015年は「正夢になったフェス」を開催し、ワンマンツアーも成功させる。2017年5月9日、一色徳保逝去。
https://tsubaki-net.com/
