ますだみく x Saucy Dogコラボ展「ふたりでいた日々」
■日時：2019年4月27日（土）〜5月12日（日）
■場所：LUCKAND-Gallery Cafe&Bar-

絵画にしろイラストにしろ音楽にしろ、ある作品に触れてどのような感情で心が揺さぶられるだろうか。自分にとって全く未知の感性に、感嘆し驚愕し感服し敬意を払うのか。自分の心をえぐるような鋭い表現に憤怒し反骨し哀惜し嫌悪してしまうのか。こと表現の対象が「恋愛」となった時、喚起させるべき重要な感情の一つに「共感」があるように思える。

「恋愛」をテーマに作品を描くイラストレーター・ますだみくは、「共感」を求めて作品を創ったことはないが、自分の体験は恥ずかしくて作品に落とし込むことができないために、「こういう人がいるんじゃないか？」「こういう人がいたらいいな」と、現実に近い妄想を膨らませて創作するという。そのように出発地点が他者の視点をとることで、彼女は若者を中心に絶大な「共感」を得ている。

一方、大阪発３ピースバンド・Saucy Dogの石原慎也（Vo&Gt）は、基本自分のことを歌っている曲が多いという。ライブでは、「それにお客さんが『共感』してくれることによって、ひとつになれる時が一番楽しい」とインタビューで語っていたことがあり、初期はその「共感」を生むラブソングを一つのきっかけとして、大きく飛躍していったバンドとも言える。

そのように恋愛を表現の源として、共感を喚起させる両者のコラボ展「ふたりでいた日々」が、4月27日（土）〜5月12日（日）に開催された。ますだみくが、自身の敬愛するSaucy Dogの楽曲を元にして、作品を描き、展示するという。彼女の世界観に、名曲と名高い数々のラブソングがどのように交わっていくのか、注目の展示となっていた。

令和の幕開けを挟んだ10連休のゴールデンウィーク中、ギャラリーのカフェ席は常に満席となっており、大盛況。Saucy Dogの楽曲が流れ、ますだみくの作品が飾られる空間にてゆっくり時を楽しむべく、並んで空席を待つ来場者があとを絶たなかった。また、即日ソールドアウトした日比谷野外音楽堂における平成最後のライブを飾ったSaucy Dogだが、4月30日のライブ当日は、Saucy DogのTシャツを身にまとった多くのファンたちでごった返していた。

作品にはますだみくが歌詞や曲からインスピレーションを受けて作品につけたタイトルと、どのラブソングから描かれた作品なのかが各々明記されていた。ますだみくの作品が「共感」を生む要素の一つに、“作品の余白”がある。前後のストーリーを想像させる余白が彼女の作品にはあり、それを自身の体験に置き換えることができるのだろう。

今回の展示では、その余白にSaucy Dogの音楽を鳴らすことができたし、その歌詞を台詞のように、描かれた彼や彼女が話している様を想像してもよい。もちろんSaucy Dogの楽曲を知らずとも、作品から楽曲とは違ったストーリーを想像するのも面白い。逆に、その作品を入り口にしてSaucy Dogの楽曲を聴いてみると、これまでとは違った印象を受けたり、曲や歌詞の深みが増すかもしれない。音楽とイラストのコラボで、これまでとは一味違ったそれぞれの作品の楽しみ方が提示されたような気がした。Music Videoやアルバムジャケットがあるのだから、楽曲ごとにMusic Illustrationが存在するというのも一つかもしれない。

今回はますだみくがSaucy Dogを敬愛していることから実現した展示だったが、お客さんの中には「元々、ますだみくもSaucy Dogも両方好きだったので、コラボ展開催に驚いた！」、という声も多かった。地方でも開催を希望する声が非常に多かったため、各地での巡回展開催も検討されている。もしそれが実現した際には、ぜひお近くの各会場まで足を運んでみてほしい。

Text & Photo by LUCKAND編集部