2016.11.15
げみの描く音、武市和希の歌う絵
げみ(イラストレーター)×武市和希(mol-74)
「ずっと一緒にものづくりしていきたいな...。」取材後、げみはポツリと呟いた。現在書籍の装画を中心に人気の高い彼が、mol-74のCDジャケットでイラストを描き始めたのは2012年。その後、今年8月にリリースしたニューアルバム『Kanki』に至るまでの約4年間、mol-74作品ほぼ全作のアートワークを担当。武市和希(Vo,Gt,Key)との出会いや、『Kanki』ジャケットイラストのイメージ、互いの関係性などをインタビューした。
「実体験から感性を磨かなくては、本物に近づくことは出来ても本物になることは出来ない」(げみ)
「手間がかからないメリットにはきちんと落とし穴がある」(武市)
—ここで話題は変わりますが、お二人が愛用しているものを教えてください。
げみ
僕はデジカメ(FUJIFILM X-A2)。外出時や絵を描く為の取材では必ず持参します。それと腱鞘炎用の手袋です。
武市
僕は去年メンバーが誕生日プレゼントでくれたボールペンです。歌詞や曲のイメージを書くので常に持ち歩いています。あとヴィレッジヴァンガードで買った携帯の充電器。片方がiphone、もう片方がAndroidになっているので便利です。
—では今、欲しいものは?
げみ
家?
武市
大きいな(笑)。
げみ
壁や柱に釘を自由に打ちたい。今は賃貸だから壁が傷つきにくい素材を使っているんだけど、絵画や大き目の立体のアート作品を結構購入するので、それらを気兼ねなく飾りたいくて。仕事場が家なので、やはり好きなもので身の回りを埋めたいし。
武市
イラストレーターならではの発想だね。僕はスイスの自転車ブランドBrunoのミニベロ。水色とグリーンの中間色がとても可愛いくて。京都は自転車が一番便利だから。
げみ
そうだね。一方通行も多いから京都なら自転車は便利で最強。
—話は尽きませんが、武市さんは今日この後ライヴなので。
武市
忘れていました(笑)。
げみ
このままだと、飲みに行くモードに入りそう。本当に毎度話は尽きないよね。
—では最後の質問を。お二人が未来のクリエイター予備軍、未来のミュージシャン予備軍に伝えたいことを教えてください。
げみ
「外に出ろ!」ということです。疑似体験は可能です。でも外に出て実体験として感動すること、何かを創作している人に触れること、クリエイティブに身を置いている人の話を聞くことや、こういうインタビューを読むのも良いと思うんです。資料なんてネットで検索すればいくらでも出てくる時代なので、テクニックさえあれば描けてしまう。でも感性を磨かないと、本物に近づくことは出来ても本物になることは出来ないと思う。最初は技術的に多少下手でも仕事の依頼は来る。向上心があれば絵は上手くなる。でも感性は何かに出会う事でしか磨かれないと思う。
武市
僕も外に出て色々なことを体験して欲しい。たまに自分もやってしまうのですが、例えば「この映画面白そう」と思ったらネットのレビューをチェックしたり、「あのお店気になる」と思ったら食べログで星の数をチェックしたり。それであたかも知った気になってしまう。 だが結果的にチャンスを逃していることも多いんじゃないかなと思うのです。手間がかからないメリットにはきちんと落とし穴がある。 だから僕だって小説を読んだ時にその場所まで出向いたり、人と話してその土地の歴史に触れることが出来たり。奥行きを知れないうちは平面的なものになっしまう気がしますね。
げみ
あと好き嫌いは無くした方が良いですね。「これは嫌いだからやめておこう」という発想は体験の邪魔になるので。作品としての奥行きだけでなく、自分の価値観も狭めていくので、自分が好きと思うことばかりに目を向けすぎず、嫌いなことを嫌いと決めつけない。まんべんなく楽しむ心を持つ。僕と武市さんとでは表現や立ち位置が違うので、今の話はあくまでも僕の立場での意見ですけど。僕は今27歳ですが、自分が現在好きなことや持っている知識は、微々たるものなので。だから体験は多い方が良いと思います。絶対に飽きるので(笑)。僕は50歳過ぎた頃に好きなものが見つかればラッキーだと思っているんです。イラストも、どのような依頼を頂いても、知らないことは受けて、やってみて、そこから発見を見いだしていった方が絶対に楽しいと思っています。
INTERVIEW & TEXT : 秋山 昌未
PHOTO : 川村 優人
PLACE : 139 cent trente-neuf
http://east-meets-west.jp/shopinfo/cent-trente-neuf/
<げみ>
京都造形芸術大学美術工芸学科日本画コース卒業後、イラストレーターとして作家活動を開始。『水族館ガール』NHKでドラマ化(木宮 条太郎 作)や『鎌倉香房メモリーズ』(阿部 暁子 作)、『優しい死神の飼い方』(知念 実希人 作)など装画を中心に活躍。mol-74作品では、CDジャケットイラストとダウンロードカードアートワークを手がける。繊細かつ暖かみのあるタッチは世代を超え人気が高く、2016年8月に自身初となる作品集を出版、すると同月中に重版出来が決定。10月にはカレンダーも発売する。
・げみ公式サイト http://gemi333.com/
<mol-74(モルカルマイナスナナジュウヨン)>
2010年9月に結成。武市和希(vo,g,key)、井上雄斗 (g,cho)、坂東志洋(ds)からなる京都を拠点とするオルタナティヴ・ロック・バンド。武市のファルセット・ヴォーカルと北欧的音像による唯一無二の世界観が特色。2016年8月にミニアルバム『Kanki』をリリース。憂いを含んだ透明感は、時に切なく時に華やかに広がりを見せる。同年10月より「kanki」release tourを開催。
・mol-74公式サイト http://mol-74.com/
NEW MINI ALBUM
『kanki』
1. エイプリル
2. %
3. プラスチックワード
4. ゆらぎ
5. アンチドート
6. pinhole
7. 開花
2016/08/17 Release
¥1,900(+tax)
Ladder Records
LADR-008
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