Art Direction : 怡土希帆
決戦前夜 Illustration : 小須田隆英
おまじない Illustartion : SRM
スピリット　Design : Sano ibuki

音楽面での楽曲内容の伝達手段はもとより、それを手にとった際のかけがえのなさや物質ならではの特典性、そして、それを基に新たなストーリーや新章、はたまた歌われる歌世界をより可視化させてくれる、これまでのSano ibukiのCDパッケージたち。今回、彼にとって初となるシングル「決戦前夜/おまじない/スピリット」でもまた、シングルながらその辺りはキチンと手を抜くことなく引き継がれ発信されている。

タイトルに3曲ある通り。今回はトリプルタイトル曲的なシングル内容。従ってジャケットも各曲毎に違ったものが用意されている。とは言え、3タイプを別々に…なんてことはせず、1枚の中、着せ替えタイプにてインサート。金に縁どられた紙製の額装フレームも用意され、聴き手各位がアナザージャケット仕様で色々と差し替えられる仕組みだ。

アートディレクションは、Sanoのインディーズ時代の作品よりADを務めてきた怡土希帆が担当。3種はオレンジ一色をバックに楽曲の擁した飛び込んでいく(ダイブしていく)感じや躍動感を近未来と現在を同居させた画風にて上手く描いた小須田隆英イラストレーションによる「決戦前夜」、花巻等で行われている、ランタンに点けた火が気球の要領で加熱された酸素により上空へとゆっくりと上がっていく「スカイランタン祭り」類の一場面を彷彿とさせるその灯篭に込めた叶えたい願いが空に舞い上がり、星へと溶け込んでいく様を幻想さを交え、歌われる歌内容やキーワードをつなげ一つのイラストレーション化させたかのようなSRMによる「おまじない」、そしてSano自身がデザインを務めた「スピリット」では、同曲が聴いた者のシチュエーションや気持ちや機微により楽曲の感受が違ってくるように、色の違った青空による幾つものフレームの中、その空に溶け込む傘が描かれている。また、プラス1枚としてボーナストラック用のジャケットも用意。こちらは是非購入して確かめて欲しい。

三種三様ながら、どこか「溶け込む」といった共通のキーワードが伺える今回のジャケットデザイン。是非、その時々の気分によって、ジャケットを変えながら、飾り、眺めながら各楽曲を聴くことをおススメしたい。きっと、またそこから違ったアナザーストーリーが広がっていくことだろう。

Sano ibukiにとって初のシングルとなった今作はいわばトリプルタイトル曲シングル。タイプの違った「決戦前夜」、「おまじない」、「スピリット」の3曲とCDのみで聴ける(サブスクでは未配信)のボーナストラックにより成り立っている。上述の各楽曲毎にデザイナーを使い分けたように今作では曲毎にあえて違ったアレンジャーを起用。各人が得意とする引き出し具合とSanoの楽曲が見事にマッチしており、各曲毎に様々な昇華具合を見せている。

M-1.の「決戦前夜」はデビュー1stアルバム『STORY TELLER』の収録されていたナンバー。昨秋公開開始された映画『ぼくらの7日間戦争』の主題歌でもあったので耳にした方もいるのではないだろうか？アルバムの中でも勢いと作品を走り出させてる役割を担っていた同曲。彼の過去ナンバーの「Sentimental」「スイマー」等、疾走感溢れるサウンドと、ガシッと手を握って引っ張ってくれるような歌詞と歌が特徴的だ。この曲のアレンジはONE OK ROCKを始め多くのロックバンドのアレンジやプロデュースを手掛けているAkkinが担当。元々疾走感や勢いを上手く引き出すことに長けている彼の手腕が光っている。M-2は打って変わってミディアムなナンバー「おまじない」。こちらはストリングスも合い交わり、しっとりとしながらも感動性や心への沁み具合も抜群。こちらのアレンジは河野圭が務めており、こちらも彼ならでは感に溢れている。続いて再びバンドサウンドが現れる。こちらは上手く静と動、メリハリやコントラスト、闇を抜けた視界良好な場所に出会った感溢れる「スピリット」だ。こちらはギターロックバンドのプロデュースに長けている江口亮が担当。秘められ込められた決意や覚悟みたいなものがほとばしるように放たれているのも印象的だ。そして＋1曲のボーナストラックはパッケージのみに収録。こちらは是非購入して聴いて欲しい。きっと次へと繋がっていくはずだから。

3曲3様にしてライヴ映えしそうなパッケージとなった今作。どの曲も歌物語もだが、聴いている受け手のライヴでのリアクションや光景も浮かんでくるシングルだ。

Sano ibuki「決戦前夜」　MV

Director：Kensaku Kakimoto [CONNECTION]

TEXT ： LUCKAND編集部