art director & designers : Hiromi Fujita
photographer : Kodai Ikemitsu

パッケージを開けた途端、筆者の先入観は見事に覆された。リリースされ2ヶ月以上経っているので、思い切ってネタバレさせてしまおうかとも思ったが、驚きは自身で経験してもらうのが一番。ただひとつだけネタバレするとしたら、CDが収納された薄紫の二つ折りの紙は、ありそうでなかなか無いタイプだ。

アートディレクター＆デザインはPARCOのキービジュアルや、書籍のアートディレクションを手がける藤田裕美。フォトグラファーは池満広大。池満はロンドンのヘアサロンに勤め、そこからフォトグラファーへ転身。2014年に帰国してからは拠点を日本に移し、ELLE JapanやVOGUE GIRL、i-D Japanなどファッションの仕事をメインに活躍する。今作の……特にアーティスト写真がファッションマガジンから抜け出たようなイメージなのにも納得がいく。ジャケット構成のユニークさと写真のクールさは、視覚的印象を大切に考える雨パレのクリエイティビティを十二分に感じさせる一枚となった。

是永亮祐（Ba）の脱退により、ボトムの在り方を変えなければいけなくなくなった雨パレにとって、蔦谷好位置（agehasprings）というプロデューサーはうってつけかもしれない。ゆず、米津玄師、sumikaなどのアーティストから、チームしゃちほこ、でんぱ組.incなどのアイドルまで、幅広いプロデュース力を持つ蔦谷は、バンドとしての出音だけでなくDAWによる新たなサウンドメイキングへの挑戦などメンバーの意識を変えていった。
新生雨パレにふさわしい＜前へ 前へ＞という意味のタイトルナンバー「Ahead Ahead」は、LRの振り分けや音質、ビートによって、楽曲がより立体的に。そこに、Neetz、小林うてな、Dos Monosなどヒップホップ、ダンスエレクトロのシーンを彩る面々によるリミックスも実に新鮮だ。

雨のパレード -「Ahead Ahead」

Director: KYOTARO HAYASHI

たまたま別のアーティストについて執筆をしていたら、このMVも同じ林響太郎の作品だと知り、衆望を担う存在だと再認識した。
クリエイティブ集団「DRAWING AND MANUAL」所属で、BUMP OF CHICKEN、菅田将暉、Aimer、米津玄師など数多くの有名アーティストのMVやTVCMを手がけつつ、インスタレーションやパフォーミングアーツ、プロジェクションマッピングなど幅広くクリエイティブに携わる。
今作では、カメラワークをあえてフィクスではなく手持ちにすることで、 楽曲の持つ、前へ進もうとする葛藤と開放を、溢れる臨場感で捉えている。

TEXT ： 秋山雅美