2019.02.21

yume

Maison book girl



Creative Director : Suzzken
Art Direction & Design : Ryuji Ohkura

アイドルの形が多様化する中で、特に異彩を放つMaison book girl(以下:ブクガ)。ディスコグラフィーを見ても、カラフルな、いわゆるアイドル的アートワークがひとつもない。それどころかメンバーの顔さえ写っていない。今回もおよそアイドルのジャケットとは言い難い面白さを見せてくれた。それまで暗い青系統を基調としていたが『yume』はモノクロと赤。更に初めて人物がデザインされている。

これまでもブクガのクリエイティブディレクターを務めてきたSuzzkenの下、アートディレクション・デザインを担当したのはRyuji Ohkura。体育座りをしている少女の顔部分には真っ赤なベッド。完全生産限定盤ではベッドが透明のスリーブケースに印刷されている為、CDとの僅かな距離によって立体感が生まれている。
スリーブケースをずらすと、 少女の顔は漆黒に奪われ、ただ赤文字でタイトルが書かれている。互いが互いを刺激しあうモノトーンのザラついた質感と鮮烈な赤。これが実際夢に出てきたら変な声を上げてベッドから飛び起きるかもしれない。

ブクガの歌詞には<ベッド>という言葉がたびたび使われてきた。今回はタイトル含め、更にその部分をフィーチャーしたデザインとなっている。中面と表4は、まるで夢の断片を切り出したかのような抽象的デザインや印象的なポジネガ反転が用いられ、連動するバックインレイと表1の背景もポジネガ反転のよう。だがもっと物憂げだ。そのせいだろうか。怖さもありつつ美しささえ感じられる。(夢に出てきたらやはり怖いが)特にAmazon完全生産限定盤のLPサイズケースはサイズ感からか、部屋に飾りたくなる一枚。

音楽家・サクライケンタによって楽曲からファッション、アートワークに至るまで全面プロデュース。アイドルとしてある意味正統派な形だろう。だが、アイドルのアルバムにインスト曲が半分も収録されることは普通ありえない!それゆえ難解と言われることの多いブクガだが、今作は少し違った。ポリリズムや現代音楽的音使いは健在だが、2017年にメジャー1stアルバム『image』をリリースした後、数枚EPをリリースしていく中で確実にポピュラリティは高まっている。特に「夢」の切なげなサビのヴォーカルラインは懐かしさも感じる王道のメロディ。最初は手探りだったと考えられるサクライとメンバーのコミュニケーションや歌の表現力が成長し、新たな広がりを見せたのかもしれない。21曲収録という充実の内容だが、決して胃もたれすることのない2ndアルバムとなった。

Maison book girl「狭い物語」

監督 : suzzken
共同監督 : 二宮ユーキ

 

ブクガに関してはMVを手がける他、ライブ「Solitude HOTEL」のディレクションやAIによる歌詞生成「cotoeri(言選り)」、ANREALAGE、京都大学の神谷之康教授とのコラボレーションなど深く関わりのあるSuzzkenが、「夢」のMVに続き「狭い物語」でも共同監督に二宮ユーキを置き、ジャケットデザインとリンクするセンセーショナルな映像世界を繰り広げた。
二宮は「おかえりさよなら」のMVで監督・撮影・編集を手掛けたが、今回は不穏に広がる真っ赤な空がなんといっても印象的。ブクガらしい楽曲世界を赤、モノトーン、青で展開し、最後のフルカラーはまるで夢から醒めたようだ。

TEXT : 秋山雅美

Maison book girl Official Site

http://maisonbookgirl.com

Maison book girl


「yume」

完全生産限定盤(CD+Blu-ray(※6/23ワンマン映像フル) / 限定仕様ケース)
PCCA-04731
¥6,000(+tax)
購入はこちら

通常盤
PCCA-04732
¥3,000(+tax)
購入はこちら

2018年11月21日発売

1. fMRI_TEST#2
2. 言選り_
3. SIX
4. 狭い物語
5. MOVE
6. ボーイミーツガール
7. PAST
8. rooms_
9. MORE PAST
10. 十六歳_
11. NIGHTMARE
12. 影の電車
13. fMRI_TEST#3
14. 夢
15. ELUDE
16. レインコートと首の無い鳥
17. YUME
18. おかえりさよなら
19. GOOD NIGHT
20. 不思議な風船
21. fMRI_TEST#1

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