Art Direction & Design ： いのうえよしひろ(Giottographica)
Illustration : 岩間重喜

鮮烈な色合いでマウリッツ・エッシャーの『上昇と下降』をオマージュしたのは、マルチな才能で海外でも人気のアーティスト岩間重喜。岩間が描いたペンローズの階段には、どこか覇気を失ったかのように見える人々が何かに操られているが如く上昇と下降を繰り返す。色の効果も相まって不気味ささえ感じるこの空間は、虎やロボットも共存する非日常の世界。よくよく見ると、1週前にリリースした『Invisible Sensation』に通ずる趣向が細部に渡っている。

バックインレイもタイトルやバンド名が左右反転し、グリッドで区切られた絵柄の一部がブロックのように崩れている。これは常識に囚われることの愚かさ、つまりはガラクタにしかすぎない常識には用はないことを意味するのだろうか。タイトルナンバーがOPテーマのTVアニメ「血界戦線 & BEYOND」の根幹も、歌詞や帯のコピーも、非日常や常識・非常識がキーワードになっていることが発想の原点だとすれば、瞬時に多くの人にその連結が想像されるエッシャーのオマージュはかなり効果的に思える。常に音楽とリンクしてきた岩間だからこそのアイデアだろう。

シングルとしては前作から約2年3ヶ月ぶりに『10% roll, 10% romance』をリリースしたかと思えば、ここに来て2週連続リリース。同年中にシングルを3枚出すのはUSG史上初めてのことであり、今作が様々なランキング上位に姿を現していることで更にステップアップしていることが分かる。勿論、タイトルナンバーがTVアニメ『血界戦線 & BEYOND』OPテーマであることは大きいが、それだけではない。ヴォーカルラインの緩急はさほどないのに胸をざわつかせるグルーヴ。ただでさえ歌詞量の多さで畳み掛けながら「悪鬼羅刹」や「驚天動地」などUSGらしい耳慣れない四字熟語を使った上に、冒頭には英詞。ここはかなり着目する点だ。一度では聴き取れないことへの疑問や何かが起こる予感。それこそが田淵智也の狙いだろう。斎藤宏介のヴォーカル力にも舌を巻く。独特なギターリフや予定調和のないリズムも、聴けば聴くほど更に再びその音を求めてしまう。更に2018年3月7日(水)にリリースのニューシングル『春が来てぼくら』がTVアニメ『3月のライオン』第2シリーズOPテーマにも決定し、USGの飛躍はまだまだ続きそうだ。

TEXT：秋山 昌未