2017.07.04
対話から創られる奇跡
KYOTARO(アーティスト)
今号の紙面裏メインビジュアルを制作したKYOTARO。先日DIESEL ART GALLERYにて、実に7年ぶりとなる大型個展『Clad in the Universe -宇宙を纏う』を行い、大成功させたアーティストだ。彼女の鉛筆画が織りなす、緻密な描き込みと濃淡で描き出される絵画は、観る者を一瞬にして惹き込み、片やペインティングは衝動やダイナミックさが全面に放たれ、一気に圧倒する。この度の個展でもその正反対の作風が共存し、独特なエネルギーが生み出されていたが、改めてその本質を探るべく、インタビューを行った。
描く前にクライアントと「対話」し、相手が欲するものと自分の個性を融合させることで最良を導き出し、描くという彼女。自身に合うスタイルと出会い、様々な共創により開花されていったそのオリジナリティについて訊いた。
パネルに魂を入れ、キャラクターと対話しながら完成に向かう(KYOTARO)
━非常に独特のタッチですが、やはり紆余曲折を経て現在のタッチに行き着いたんですか?
KYOTARO
10代の頃はグロテスクなものに惹かれる傾向が強かったんです。作風も「気持ち悪い」 と言われていた時代もありましたが(笑)。自分にとってはグロテスクの中に美しさというのが見える気がしていたので、その部分を大切にしながら試行改良を重ねていった結果、今のような作風になってきました。「生きている」ような「生き物のような」絵をかけるようになったのには、グロテスクが根源にあるからでもあるんです。
━影響や感銘を受けた方はおられますか?
KYOTARO
マンガであれば手塚治虫先生、アニメだったら宮崎駿さん、イギリス人のイラストレーター/画家 アラン・オルドリッジさん等に影響を受けています。
━いま挙げて下さった方々をミックスしても、とても KYOTARO さんのような作風になる気がしません(笑)。 ちなみにアラン・オルドリッジの好きなところは?
KYOTARO
色彩構成、緻密さ、丁寧さ、クオリティの高さ、ポップなところもキチンと加えていたり。細かくリアルに描かれて少し怖いけど、そんなにおどろおどろしく感じさせないところです。
━確かに。でもそれって KYOTARO さんの各作品にも言えるところで。加えて、KYOTAROさんの絵画からは、 飛び出してきたり、襲いかかってきたり、吸い込まれたり、包まれるような躍動感や生命力、包容力や迫力も感じます。
KYOTARO
ありがとうございます。その感想、とても嬉しいです。その辺りはもしかしたら、絵を描く前にパネル自体に、 「魂入れ」という作業をしているからかもしれません。
━その「魂入れ」とは?
KYOTARO
私の場合、まずはパネルにキャラクターの魂を入れて、対話しながら描き上げていくんです。自分のイメージがあって、それと共鳴するキャラクターを絵の土台に込めて、それと対話しながら描き上げていく、みたいな。そこに色々な情報を投げ込んで、しっくりとくる着地点を見つけていき、その都度、各キャラクターと確認し合いながら進めていくんです。「私、これ嫌い!!」と向こう(絵画)から言われたら、違ったものを当てはめていったり。架空のキャスティングや、それを演出していく、そんな感じかな。
━では、やっているうちに、結果、こんな方向性に変わっていたなんてことも…。
KYOTARO
結構あります。自分では発想しない要素がそのキャラクターから出てきたりして面白いですよ。相手の納得を無視して勝手に進めていったら、段々怒った顔つきになっていったり。そんな時は、「ゴメン、ゴメン、 違ってたようね」と修正してくんです(笑)。
まず相手のビジョンを聞き、自分をすり合わせて最良のテーマを導き出す(KYOTARO)
━聞くところによると今回の個展は8か月で100点を描き上げたとか。
DIESEL ART GALLERY『Clad in the Universe -宇宙を纏う』展示作品
KYOTARO
体力的にも精神的にもちょっと大変でした。旦那にストレス解消にお散歩につき合ってもらったり、ご飯を作ってもらったりして色々助けてもらいました。あと、 データ入力のアルバイトをして、あえて左脳も使いながらバランスを取って書いたり。クリエイティブな右脳だけ使っていたら、きっともっと疲れて消耗も早かったでしょうね。
━今回の個展の場合は、そのインスピレーションや最初のモチーフはどういったところから湧いてきたんですか?
KYOTARO
私はまず、そのリクエストをくれた方へのヒアリングから始めるんです。「何が欲しいか」「私に何を望んでいるのか」「その会社の今後のビジョン」等を訊いて、それと自分をすり合わせて最良と思えるテーマを導き出すんです。いわゆる相手の望むものに自分の手札の中で最も適しているであろうものを当てはめるというか。私も役に立ちたいですからね。
━役に立ちたい、ですか?
KYOTARO
役に立てるというのが、私の中ではけっこう重要であって。自分に出来るサービスって何だろう?みたいな。仕事的に芸術のことも捉えているんです。
━役に立てることの重視って、芸術の観点からするとかなり真逆の印象があります。芸術は個性やアイデンティティを中心にしていないと成立しづらいイメージが個人的にはあるもので…。
KYOTARO
結局、先方が好きなものや望んでいるものをお出ししないと、先方も気分が乗らないし、全体が暗くなるじゃないですか。みんなが同意し、共有でき、これで行こうと一丸となれる何かに落とし込んでいくことが重要だと私は思っていて。その会社が大事にしているものを具現化できると、けっこう奇跡が起こったりする んですよね。
━みんなで一緒に作り上げよう、盛り上げようといった共存意識が奇跡を生むと。
KYOTARO
ちょっとリアルな話なんですけど(笑)、みんながやる気になって、これの為だったら頑張って働けるというところを作るのが結果、利益に繋がってくるんじゃないかって。やはり、みなさんが買っていただかないと困りますからね(笑)。そこに収益がないと色々なものが上手くいかないだろうし。そうじゃないとこちらも困る(笑)。
━(笑)。
KYOTARO
みなさんに喜んでもらえて、自分も嬉しい、それがベストですから。自分の生きがいって、人と一緒にお仕事をすることだったりもするんだろうなぁ…なんて思いながら描いています。
DIESEL ART GALLERY『Clad in the Universe -宇宙を纏う』展示作品
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