2017.03.20

小見山峻が撮る、写真と音楽と言葉と

小見山峻(フォトグラファー)

若手の写真家が次々と登場する中でも、小見山峻の写真は異彩を放つ。散歩がすごく好きという彼は、大好きな音楽を聴きながら心地の良い風景を求めているのだろうか。彼が撮る写真には、その空間が切り取られ、その中で人が和んでいる。映像のような写真は、彼の散歩のワンシーンであり、誰かの人生の一コマを感じさせるものが多い。そしてデザインされた絵としても惹きつけられる。また、エッセイストとしての才能も発揮され、「メロディーの代わりの写真、歌詞の代わりの散文」という形での作品も創り続けている。一方で、早くからSuchmosに注目し、ライヴ写真を撮影してきたことでも知られる。深みのある写真が生まれる背景、小見山峻の視線の先にあるものを追った。

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“人と同じことをしていたら意味ないよな”という気持ちに駆られてきた(小見山峻)

−Zineをフリーペーパーとして作ったのは、自分の作品をきちんと明確に見せていきたい気持ちからですか?

小見山

まず、人と同じことをやる意味がないなと思って。手に取れるものが欲しい、でもPhotozineも流行っているので、世の中に何万冊とある一冊になるのも嫌だったし、かといって、ちゃんとした写真集を作って売ったところで価格は高くなるし、本当に写真が大好きな人しか買わないだろうし、というのがあって。じゃぁ、まずタダで配ろうと。1000部作ったんですけど、渋谷のタワーレコードさんやゆかりのあるセレクトショップに置かせてもらったら、すぐになくなりました。第2号は1500部作って、ちょうど配布を始めるところです。

−“人と同じことをやりたくない”という意識はずっと前から?

小見山

ありますね。僕は生まれつき髪の毛とか体毛が一切生えない体質なんです。それで別に苦労したこととかないんですけど。思春期の頃にさすがにいろいろと考えることがあって、“こう生まれてきたからには、人には無い何かがあるはずだろう”っていう謎の過信みたいなものが昔からあって。だからこそ、“人と同じことをしていたら意味ないよな”という気持ちに駆られることが多いのかもしれません。

−そういう考え方は大切ですよね。中学や高校では何をやっていたのですか?

小見山

僕は6年間、ずっと陸上競技をやっていました。

−でも大学ではテニスをやっていたそうで。

小見山

大学に入って、陸上をやっていた頃のストイックさはもうできないなと思って。テニスもテニス部ではなくてテニスサークルなので、高校の友達に驚かれるくらいの反動ですごい遊んでました(笑)。いろんな映画を観る時間がいっぱいあったし、車の免許も取っていろんなところへ行ったりしたので、この期間に無心でいろんなものを観れたのは良かったですね。

−映画がすごく好きなようですけど、好きな映画監督はいますか?

小見山

監督というよりは、小さい頃から『スター・ウォーズ』と『ゴジラ』が大好きだったんです。『スター・ウォーズ』も当初は物語が好きというよりは、出てくる飛行機とかロボットの方が大好きで、『ゴジラ』も自衛隊の対ゴジラ用兵器とかすごい好き。親父が好きだった『サンダーバード』も全部プラモデルとか持っていたりして、未だに機械とか好き。だから、工事現場の重機を撮り続けているシリーズがあるんです。

−見ました。アップの写真、いいですよね。

小見山

あれって、すごいポップだと思って。なんでこんなに重機にこだわるんだろうと思って考えていたら、“そうだ、ずっとロボットが好きだったんだ”って。もうちょっと撮りためて一冊形にしたいなと思っています。日本の道路標識とか横断歩道とかも、グラフィックというかすごい好きでかなり写真に使うんですよね。あと最近は、“東京をどうやったら面白く撮れるのかな”っていうのがテーマとしてあるんです。東京の、みんなが見落としてるような、何気ない場所を切り取り方で面白く見せたいと。2020年の東京オリンピックの時に、「東京をこんなに面白く撮れる奴がいるんだぜ!」ってなりたいですね。

楽しみにしています。それに、エッセイも書いていますよね?

小見山

お金に困っていた時にある賞に応募したら賞を獲ったので(笑)、肩書きに書いているくらいで。

−文才ありますよね。写真と組み合わせたシリーズも好きです。

小見山

最初は、写真は写真でちゃんと語るべきだし、言葉を足すのは自分の写真に饒舌さが足りていないと言っているようなものだから、蛇足だと思っていたんですけど、それを見て「いい!」って言ってくださる方が多くて。表現の方法が反対のものだからこそ、相乗効果があるんじゃないかなと思っています。

−写真と合わせてストーリーを書いている作品がありますが、それらはどういう順で作っていったの?

小見山

何となく話の流れを考えておく→撮る→最終的に書き上げる、という流れが殆どですね。作品を撮る時は基本的にいつも、自分の中で詩的なテーマをほぼ殴り書きの散文で作ってから撮影していて、上がった写真を見て言葉がハマりそうでしたら言葉を足す、という感じ。常日頃から思いついた言葉やフレーズ、文章はひたすらメモしてあって、その中から撮影のインスピレーションを作ったり、ロケ場所のイメージを作ったりするので、後から載せた言葉がハマるのかもしれません。

−メモしているんですね。

小見山

基本的に、“後ろ向きなモノをなんとか前向きにしよう”という感覚がある時にそういった殴り書きをすることが多いので、だから根っからハッピーな写真をあまり撮らないのかもしれない。

−こういった写真+エッセイ的な試みをしようと思ったきっかけは?

小見山

写真があまりにも読み取り手に依存してしまうので。例えば、海で女の子が立っている写真があったとして、なんで海に来たのかは全く語られないので、「嫌なことがあって海に来た」のか、「海の近くに住んでる子」なのか、もう少し、枠組みだけ限定させたいと思ったからですね。それを全て読み手に委ねるのが写真の醍醐味ではあるんですけど、結局読み手が女の子の顔を見て「かわいい!」で完結されたら嫌だし、軽い筋書きくらいは用意してもいいのかな、と。それこそ歌くらいの感じで、メロディーと歌詞で60%くらいのイメージを提供する、みたいな具合です。メロディーの代わりの写真、歌詞の代わりの散文、といった感じかな。

−まさに音楽のようですね。写真以外に何かやっていきたいことはありますか?

小見山

今はないですね。「映像をやりませんか?」ってすごい言われるけど、そもそも写真と映像は全く別物だし、エンターテインメントとしてもっと写真を面白くできる可能性がいっぱいあると思う。だから限界まで突き詰めて、これ以上写真でできることがないとなったら映像をやるかもしれないですけど、たぶん一生賭けてもそこまで辿り着かない。

−いいですね。「自分はコレ!」というものがまず一つないと。

小見山

そうなんです。実家の家系が曽祖父くらいまでずっと刀鍛冶だったし、じいちゃんも親父も専門職なので、職人に憧れていた部分もあって、「何をやってますか?」と訊かれた時に、「写真家です」、それで完結する人でありたい。だから、あんまりいろんなことをやっている人って個人的には好きじゃない。(軸と成すものに)付随して表現として何か増えていくというのはなんかわかりますけど。

−最後に今一番のお気に入りの写真を教えて下さい。

小見山

Scoobie Doの写真ですね。高校生の時から好きだったバンドで、ひょんな出逢いから撮らせていただけることになって、それがさっき言ってた、“自分の撮りたい景色に撮りたい人がハマって、相乗効果を生んで、自分の思っていたもののさらに上に行ってくれた写真”だったんです。自分がセッティングした場所にその人たちが行ったタイミングで、“あぁ、もうこれ絶対にいい写真だ”という、すごい気持ち良さがあった。自分が写真をやっていく上で“楽しいって、これなんだ。じゃぁ、これをいっぱいやろう”っていうのが今の気持ちです。その人たちの曲を聴きながら撮り方を考えていたので、やっぱり“音楽があるといいのかな、自分の中で音楽が大事なのかな”と思っています。

【小見山峻・愛用品】

<耳栓>
ライヴの撮影の時に、DJとかが使っている、耳に悪い周波を切り取る耳栓。僕らスピーカーの真ん前とかにいるので、耳をやられるんですよ。

<ジッポー>
ジッポーはイエローサブマリンのジッポーで、買った時は結構ピカピカだったんですけど、町田のどこか、すごい昔に買って、結構僕は無くしたりとか落としたりとかを繰り返していたんで、だんだん味が出ていい感じ。これを持っていると飲み屋とかで、気のいいおじちゃんとかが話しかけてくれて、いいね〜って、ちょっと盛り上がる。ヘビースモーカーではないです。

INTERVIEW:伊藤なつみ
TEXT:伊藤なつみ
PHOTO:小見山峻
INTERVIEW PHOTO:安藤きをく

<小見山峻>

神奈川県横浜市出身。ファッションフォトやポートレートをはじめ、suchmosやSANABAGUN.など様々なバンドのライブアクトや夏フェスの撮影など、幅広く活動。文芸思潮エッセイ賞 社会批評賞佳作受賞(2013)。グループ展「A.W.P Selection 2016」 ‐次世代を担う写真家たち‐ at リコーイメージングスクエア銀座(2016)、グループ展「Nobody Knows」at 表参道ヒルズ ROCKETギャラリー(2016)などで展示。また、完全無料の写真冊子、”depth charge issue”を自費出版で発行している。
http://shunkomiyama.com/

<depth charge issue : No.2 – afterburner –:配布場所>

 

-TOKYO-
タワーレコード渋谷店 / KIKUNOBU TOKYO(代官山) / H>FRACTAL(ラフォーレ原宿3F) / Light Up Coffee(吉祥寺) / darlin. Hair(祐天寺) / Sticky Fingers(町田) / STRANGER(池の上)

-YOKOHAMA-
fathom(クイーンズスクエア横浜at!) / PLANET(横浜ビブレ1F)

-OSAKA-
KIKUNOBU OSAKA(南船場) / FREEDOM FROM COMMONSENSE.(南船場) / JAMMRU(心斎橋) /

-KOBE-
Fab4(三ノ宮)

-SHIMANE-
KIKUNOBU SHIMANE(松江)

-KUMAMOTO-
&Chill(上通町)
※その他順次拡大予定

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