2017.03.20
小見山峻が撮る、写真と音楽と言葉と
小見山峻(フォトグラファー)
若手の写真家が次々と登場する中でも、小見山峻の写真は異彩を放つ。散歩がすごく好きという彼は、大好きな音楽を聴きながら心地の良い風景を求めているのだろうか。彼が撮る写真には、その空間が切り取られ、その中で人が和んでいる。映像のような写真は、彼の散歩のワンシーンであり、誰かの人生の一コマを感じさせるものが多い。そしてデザインされた絵としても惹きつけられる。また、エッセイストとしての才能も発揮され、「メロディーの代わりの写真、歌詞の代わりの散文」という形での作品も創り続けている。一方で、早くからSuchmosに注目し、ライヴ写真を撮影してきたことでも知られる。深みのある写真が生まれる背景、小見山峻の視線の先にあるものを追った。
写真を撮るようになったのは、心から楽しいと思ったからですね(小見山峻)
−写真を撮ろうと思ったきっかけは何だったのですか?
小見山峻
3、4年前から。散歩するのがすごく好きで、“カメラで撮る作業があれば、より散歩が楽しくなるかな”という安易な発想が最初で、型落ちの安いカメラを買ってなんとなく撮り始めました。当初は道端の猫とか(笑)。
−自分のDNAを辿ってみて何か思い当たることはあります?
小見山
小さい時は映画監督になりたかったのと、写真よりも、イラストだったり絵画だったりアート全般に興味がありました。確固たるルーツがあって写真に辿り着いたというよりも、何かこう自分で“ものづくり”とかしたいと漠然と思ってて、カメラがたまたまがハマった感じ。その今まで見てきた様々なものが、惜しみなく活かせるのが写真だったと、今になって思います。
−就活や大学卒業前後はどういうことを考えていたのですか?
小見山
ずっとサークルをワイワイ楽しくやってて、3年の秋に就活モードになった時に、ふと友達に「なんで就活するんだろうね?」って聞いたんですよ。そうしたら「3年の秋だからでしょ」って言われて、それはなんかおかしな話だなと思って。そこからやりたいことを探し始めた。たまたま留年したのもあって(笑)、時間もあったので、漫画家さんのアシスタントをやっている人とか、それこそアーケードゲームの修理をしている人とか、人づてにいろんな人に会って、話を聞いたりしていました。
−ものづくりのクリエイターとして、着地点を模索していたという?
小見山
そうですね。会社に勤めた同期の話を聞いてても、全然楽しそうじゃなかったんですよ。僕、誕生日がジミ・ヘンドリックスと一緒の11月27日で。ジミヘンが27歳の9月18日に死んだので、自分も27歳のその命日までは人生に一区切りをつけようと決めていて。去年その日を迎えて、「わぁ~」って思いました(笑)
−その日の前に写真をやることは決めていたわけですよね?
小見山
はい。大学を卒業してから写真を撮るようになったんですけど、一昨年の頭、26の春ぐらいに写真で食べていこうと思って。
そのきっかけは?
小見山
心から楽しいと思ったからですね。こんなに楽しいこと、他にないだろうなと。
−でも最初は食べていけなかったのではないですか?
小見山
当時は友達のブランドを撮ったり、細かい仕事はあったけど、食べていくには足りなかったですね。実際、フォトグラファーが食える仕事なのか、どういうライフスタイルを送っているのかもわからなかったので、フォトグラファーのアシスタントにその年の3月から半年間だけ行かせてもらって。その方はライヴ撮影が多くて、映画のスチールやタレントさんも撮ってるし、ファッションもやってたので、いろんな現場を見られるだろうなと思ったんです。
−自分で探したの?
小見山
その前の年に行ったスペースシャワーの『Sweet Love Shower』で、大好きな斉藤和義さんを最前列で見ていたら、その方の撮った写真に僕が映ってたので、“じゃぁこのフォトグラファーさんに(アシスタントにしてもらえるか)聞いてみよう”と。で、その方は、その方と仲のいいバンドがデビューする前からずっと撮っていたりしていたので、僕はそれまでライヴを撮ることとか全然考えていなかったけど、自分もそういうバンドがあったら面白いなと思ったんです。ジャミロクワイが昔から好きで、“同世代の日本人でアシッドジャズやジャミロクワイみたいな音楽やってる面白い奴らはいないかなぁ”ってYouTubeで探してて、見つけたのがSuchmosでした。
−そこから「写真を撮りたい」とコンタクトしたの?
小見山
Twitterで呟いたんですよ。「Suchmosっていうのがすげえいい!」って。そうしたら(メンバーの)Hsuがそれを見つけて、僕のTwitterをフォローしてくれて、「写真、カッコイイですね」ってなって、やりとりするうちに「撮らせてよ!」ってなって、会ってみたら、歳も近いし、家も近所だった。2015年4月4日の下北沢GARAGEが初対面で、それから彼らを撮っています。
−私はその後の新宿MARZからですね、Suchmosを観ているのは。でも、いつも撮影しているわけではないですよね。
小見山
そうなんですよ。ここ一番というツアーとか、リリースのイベントとかは撮ってますけど、そんなに回数は撮ってない。俺の写真がダサいと思ったら、新しい人を探せばいいとは思っていて、絶対負けませんけど(笑)、そうならないように努力している。だから、Suchmosのライヴを撮る時はSuchmosと闘ってるくらいの気持ちで考えてます。単純に仲が良いからってだけの理由でつるんでいるわけではないですよね。
−お互いソロ活動しながら、時々一緒になる感じ?
小見山
そうそう、そういう感じ。ちゃんとお互いリスペクトを持って(関係性が)できていると思うんで。みんなでインターハイ目指す部活みたいな感じだなって思ってます。『スラムダンク』です(笑)。
<NEXT 2/3>「人を撮るというより、その人がいる景色を撮るという気持ちがすごく強い」