2018.02.24

現代感覚を投影した美濃焼の挑み

髙井宣泰(作山窯・代表)

美濃焼の伝統と技術を活かしつつ、素朴ながらも美しく現代感覚が反映されたSAKUZANのうつわ。SAKUZANはファッショナブルな若者が多いエリアにあるレストランや、感度の高いインテリアショップ・ハウスウェアショップなどで取り扱われている。さらにはAfternoon TeaやCollexなどとのコラボレーション商品を生み出すなどといった、積極的な仕掛けも目を惹く。岐阜県土岐市に工房を構えるこの窯元が、伝統の美濃焼をこの時代に融合させ、見事に展開をしている秘訣を探るために岐阜を訪れ、代表の髙井宣泰社長がインタビューに応じてくれた。

「衣食住を演出している人間としての意識で、モノづくりをしている」

−そうやってブランディングを進めていった感触はどうですか?

高井

SAKUZANに対する見方が変わってきますよね。するとお客さんが変わり、そして、従業員の意識が変わるんです。彼らの意識が変われば、SAKUZANも変わっていく。自分の目指していたブランディングに向けてやってきた結果だけど、同時にそのブランディング自体も変わっていくので、それも面白いですね。

−人も変わっていったんですね。若い方が増えましたか?

高井

はい、若い人も入ってくるようになったし、女性も入るようになってきました。

−若い人が入れば、また彼らから新しい発想も出てきますよね。

高井

これまで全て自分がデザインをして作って、とやってきた部分があったのですが自分も今年55歳になるので、人はしっかり育てていっています。年に一回、表参道で展示会をやっているけれど、そこでは若い職人の陶器も出していくように変えてきています。ただ、そこで一回売れたから良かった、ではなく自分たちの作ったものでリピーターができるかどうかが、一番大事ですね。

−ずっと使ってもらえるものを提供するのは、一番大事で難しいことだと思うのですが?

高井

そうですね。毎日使いたいものを作るには絶対的に経験が必要です。学校を出てすぐに職人を名乗る若者もいますが、5年はやらないとダメだと思っていて。食器とは毎日、長く使いたいものです。そして、安定したものを提供できること。作品を作る作家さんは手間暇かけた一点ものを作れるけれど、職人は毎日使いたい食器を作らなければならない。我々は衣食住を演出している人間としての意識でモノづくりをしています。

−今回LUCKANDのカフェで導入するシリーズ「DAYS」のあのマットな質感や色は、偶発的な要素もあって生まれたとか?

高井

あのシリーズのSaraという商品の形状は元々あったもので、風合いにこだわっていろいろ試していたのですが、ある時、釉薬(*ゆうやく=器の表面にかける薬品のことで、焼くと表面がガラス質で覆われるようになる)の配合を少し間違えたんでしょうね、偶然あの雰囲気が出たんです。ネイビーのものでした。そしたら、お、こりゃいいぞ、と(笑)。

−配合を間違えたところからですか(笑)。

高井

ただ、ネイビーというのは食器で一般的に嫌われるので、その時は引き出しの中にとっておいたんです。私は必ず、お、というものが出来た時は一旦時間を空けて置いておくんです。時間を空けた後にどう見えるかを確かめる。それでこれはシックなラインとしていけるのでは? と思ったのでネイビー、グレー、クリームなどをやってみたんです。それがよかったので、そこから色数を増やしていった。

−時間を空けてフラットな状態で見ることが大事なんですね。

高井

私は技法というものはあまりどうでもいい、というか、技法にこだわってそこから何かを作るという感覚ではないですね。こういう色を出したい、こういう質感を出したい、そのためにどうすればよいかということを考えていろいろやってみる。その中で生まれたという意味であのSaraは、偶然の産物ではありますね。

−ルーティーンからは生まれない、いろいろなことをトライするからこそ、出来たものなのですね。

高井

そう、その場その場でいろいろ試しながらやっているから「これいいじゃん!」というものができても、どうやってそれができたか分からない(笑)。そこからまたそれを再現しようと頑張ります。うちはそういうのばかりですよ(笑)。

−最後に、岐阜という場所と産業についてはどのように見られていますか?

高井

これまでも地場産業は衰退してきた部分があるし、今後もどんどん減っていくと思う。組合もあって、いろんな取り組みをされてきたと思うけれど、なかなかうまくいかない部分もありますよね。だから、SAKUZANは必ずしもそこだけじゃないと思ってやってきた。そして、最初に話したようなブランディングや仕組みを変えていく流れから、SAKUZANイコール直販というイメージになってきたんですね。実際は今でも商社を通して取引しているものの方が多いのですが、SAKUZANが派手な動きしてるぞ、と思われるようになった。でも、それはそれでいいと思っていて。SAKUZANがこの岐阜で続けていくこと、成功していくことで、周りも「SAKUZANってどうやっているんだ?」と興味を持ってくれる。生意気かもしれないですが、興味を持って来てくれればちゃんと教えるし、それが地場産業を活性化していくことにつながると思っています。

−背中で引っ張っていく感じですね。

高井

そんな大したことではないかもしれないけど、自分にできることはそういうことですね。職人が多い町だし、経営者も職人が多いんですよ。職人は働くことが好きで、作っていればそれでよいという感覚があって。自分が頑張ればいい、と。ただそれだと人は育たないし、小さくなってしまいますよね。子どもが継ごうと頑張ってくれても、ブランディングのためにウェブサイトに百万円も二百万円もかけるとか、頑固な職人である親は許さないでしょうし(笑)。そういう意味では私は好き勝手に自分の責任でやらしてもらって、それが今に繋がっているので、何か少しでも伝わればよいと思って頑張っていきます。

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