Art Director : 高尾 裕司(環七グラフィック)
Design : 高石 昴(環七グラフィック)
Photographer : 中野敬久
Stylist : 満園正明(UM)

クアイフの森彩乃(Vo./Key.)のアップがインパクトを与えるこのジャケット。細かいサウンドノイズは、後述のタイトル曲MVやタイアップとなるアニメ『いぬやしき』のビジュアルイメージとリンクしているようにも思える。だが、構図そのものはシンプルがゆえ、見る者にすんなりとインプットされる。この絶妙な塩梅のアートワークを手がけたのは高尾裕司。デザインのみならずイラストや写真、コピーライティングと多岐にわたり制作を請け負う環七グラフィックを束ねるクリエイターだ。デザインは同社の高石昴。そして、ミュージシャンや俳優にも絶大の信頼をおき、活躍を続けるフォトグラファー・中野敬久による写真の説得力も、なるほどと頷ける。今作でメジャーデビューとなるクアイフの新たな一面が表現されている。

TVアニメ『いぬやしき』エンディングテーマでも流れており、耳馴染みのある方も多いかもしれない「愛を教えてくれた君へ」。ドラマティックで感動的なミディアムバラードであるタイトル曲は、エレクトロやグリッチ音を織り交ぜながらも、根底にはシッカリと鳴る鍵盤、ベース、ドラム。3ピースバンドの彼らの本質が色濃く伺える1曲だ。ストリングスもふんだんに交えられ、心に溜めた主人公の胸の内が溢れんばかりに伝わってくる感情模様も聴きどころだ。ここまでの作品で開放感のある歌の表情が目立った森の歌声だったが、今作は逆にセンシティヴな歌表現に注目。質感的にはまた本質に立ち戻ったかのような、リアリティを帯びて響いてくる楽曲印象を持った。カップリングの「セツナロマンティック」もエレクトロ度の高い、しかし、こちらは駆け出したくなるようなポップナンバー。遠距離恋愛の不安を、「その想いがあれば大丈夫！」と気丈に響かせてくれる。共に人恋しさが募るこの季節にぴったりな1枚だ。

クアイフ 『愛を教えてくれた君へ』Music Video(Short ver.)

Producer : 乾宏樹(TETRAPOT FILMS)
Director : 朝田洋介

楽曲の世界観を表現したプロジェクションや光線の映像美が印象的なMV。数々の著名なアーティストの映像作品を手がけるTETRAPOT FILMSの乾宏樹と、THE NOVEMBERSの「最近あなたの暮らしはどう」のMVやライヴDVD『美しい日』も手掛けている朝田洋介が担当。暗闇の中にある光明のはかなさと尊さを、さまざま光の加減や形、放射や屈折率を用い表現している。クアイフの楽曲の根底にある、希望の尊さが引き上げられ、「愛しさ」が更に引き立たつ。森の物憂げであり優しい表情と淡々としたしぐさから、心の奥底のエモさをにじみ出させているところも興味深い。なおGYAO！では12月29日までの期間限定でフルバージョンが視聴できる。

TEXT : LUCKAND