2023.02.20

LUCKAND Exhibition『ラカンド展』

共に創りあげてきたキセキを振り返る展示会と 12 年間の想いを綴るインタビュー

「モノづくり」に関わる全ての創作者のための Gallery Cafe LUCKAND、活動休止前最後となる Exhibition『ラカンド展』。 今までの活動やたくさんの方々と共に創りあげてきたキセキを振り返る展示会の様子と同時に、Gallery Cafe LUCKANDのオーナーであるカトー、スタッフとして働いてきた、さかたとayuの想いをお届けする。

Gallery Cafe LUCKANDスタッフ、オーナー インタビュー

学生の頃、勇気を出して訪れたLUCKANDに魅了され、ついにはスタッフとなったayu。LUCKAND愛が強く、『LUCKAND Exhibition“ラカンド展”』を開催する後押しに一翼を担った人物だ。
 
―なにがきっかけでLUCKANDを知りましたか。

ayu

もともと音楽が好きで、なかでも凛として時雨が大好きだったんです。母体であるラッカがマーチャンを手掛けていたことからLUCKANDの存在を知り、大学生になって都内へ出てくることが増えたので勇気を出してカフェを訪れました。初めてLUCKANDへ行ったときは「こんなにおしゃれな空間があるんだ」って感動しましたね。

―LUCKANDとの出会いは、ayuさんの人生にどのような影響を及ぼしましたか。

ayu

カフェやコーヒーの魅力に目覚めたのは、LUCKANDがきっかけです。他のカフェにも通うようになって、東京での活動範囲もどんどん広がっていきました。結果的に「こういう空間を作れるようになりたい」と思い、新卒でコーヒーチェーンの設計部に就職したんです。

―新卒として入社する前から「いつかLUCKANDで働こう」と決めていたんですか。

ayu

社会を知り、実際に担当を任せてもらうまでに、入社してから数年は必要かなと思っていた部分はありました。でも決意したのは、一通り仕事を学んだうえで諦められない想いがあったから。いざ自分の気持ちに素直になったとき、「どうしてもLUCKANDで働きたい」と思ったんです。採用してもらえる確信はありませんでしたが、挑戦しないで諦めるのは嫌でしたし、もし落ちたとしたらそのときに考えればいいかなって。

―今までで一番印象に残っている展示は、どなたのものになりますか。

ayu

凛として時雨のアートワークを手掛けているYukiyo Japanさんの個展は、強く印象に残っていますね。好きなアーティストさんの個展が好きな場所で開催されるとのことで、期間中に何度か通ったと思います。代表のカトーさんとお話をするようになった展示でもありましたし、いろいろなきっかけが詰まっていたと思います。

―『LUCKAND Exhibition“ラカンド展”』のディレクションを担当されたとのことですが、こだわりポイントはどこでしょうか。

ayu

全部こだわっているんですけど(笑)。フリーマガジンのコーナーを入口に設けたのはポイントですね。ポスターを描いてくださった9名のアーティストさんと表裏の写真を撮ってくださった方々は、LUCKANDと特に関係が深いと思っているので。また、奥の壁一面には“たくさんの方が個展をされたこの場所で、たくさんの人にもう一度その作品に出会ってほしい”という想いをこめて「もう一度、作品と出会える場所」をテーマにキャンバスを飾っています。

―ayuさんにとって、LUCKANDはどのような存在ですか。

ayu

すごく壮大になるんですけど、人生ですね。生きてきたなかで、とても大きい存在だったので、一言でいうなら“人生”かなって。

 

Gallery Cafe LUCKANDにて、おいしいコーヒーとケーキを振舞っているさかた。コロナ禍も含めて6年間以上もLUCKANDを支え、アーティストや地域の人が集う場所を守り続けてきた。

―なにがきっかけでLUCKANDを知りましたか。

さかた

People In The Boxのグッズがすごく可愛くて、「どこの会社がデザインしているんだろう」と興味を持ち、ラッカと出会ったのがきっかけです。会社の情報をずっと見ていたら、ギャラリーカフェの求人が出ていたので、応募して今に至ります。

―なぜ、LUCKANDで働いてみたいと思ったんですか。

さかた

画家と両立しながら働ける場所を探していたんですよ。ここはギャラリーカフェだからいろいろな作家さんの作品を観ることができるし、大好きなコーヒーのことも学べる。もともとは「ギャラリーを手伝えたら…」くらいの気持ちでしたが、働いているなかでコーヒーを淹れたりケーキを作ったりするようになっていきました。

―ご自身で「コーヒーを淹れられるようになりたい」と立候補されたんですか。

さかた

自然とそういう流れで…(笑)。「おいしいコーヒーを淹れられるようになったらいいよね」と思ってはいたので、いろいろなバリスタの方から学ぶ機会があったのは嬉しかったですね。ミルクをただ温めて泡立ててもおいしくならない理由なんかも直に教えていただけたので、理由を理解したうえでおいしいコーヒーを淹れられるようになりました。今では家でコーヒーを飲むときもハンドドリップだし、アウトドア用のエスプレッソマシーンでラテを淹れることもあります。もはや日常の一部ですね。

―今までで一番印象に残っている展示は、どなたのものになりますか。

さかた

河島 遼太郎さんの作品展が開催されたのは、すごく嬉しかったですね。表では平静を装っていたんですけど、実際はとても興奮しました。当日も「めっちゃファンです。めっちゃ作品かっこいいです」とご本人にお伝えしました。

―さかたさんにとって、LUCKANDはどのような存在ですか。

さかた

生活のリズムの一部というか、“生活の流れを作ってきた場所”かな。ここで働いていなかったら出会わなかった作家さんがいますし、感じていなかった感情もある。6年以上働いてきたので、自分を育てた場所でもあります。ギャラリーカフェという場所で働けて、LUCKANDで働けて、本当によかった。

 

LUCK’A Inc.(ラッカ)の創始者でありながら、Gallery Cafe LUCKANDのオーナーであるカトー。立ち上げにあたっての経緯と、オープン当初から現在までの12年あまりの想いや思い出について深掘りした。

―ラッカを経営しながらも、Gallery Cafe LUCKANDをつくろうと思ったきっかけはなんですか。

カトー

まずLUCKANDは東京の中心地のなかでも少し独特な地域にあって。そしてカフェ以外にもギャラリーやプロダクトがあり、自分自身の好きなものを詰め込んでいます。でもこのような空間は理想型であるが故に運営していくのは難しいというのが分かっていて。20代前半で店舗運営の試算をしたのですが、好きなモノだけを詰め込むのは難しいことを知り、世の中はそう甘くないと思ったので。だからまず一つ柱がないとならないと思い、ラッカを立ち上げました。元々「20代は色々なものを吸収して30に独立し、その会社を一本の柱として40までにギャラリーカフェをつくろう」という目標を掲げていました。

―ギャラリーカフェへの想いの方が先だったんですね。

カトー

そうですね。自分の中ではまずギャラリーカフェをつくりたい想いがあって、そのためにラッカを立ち上げた順番になるんです。LUCK+andで『LUCKAND(ラカンド)』という名前の由来はここからですね。

―デザインやコーヒーに出会ったきっかけはなんでしたか。

カトー

正確に言えばグラフィックデザインは、新卒で入社した会社でMacintosh(Mac)との出会いが最初でした。より学びたいと思ったりコーヒーに出会ったりしたきっかけは、地元でちょっとイカしたマスターがやっているカフェとの出会いからで、そのカフェはログハウスのようなDIYでつくった感じの内装で、写真家や画家を目指す人たちが出入りしている場所だったんです。当時デザインの感性が出始めたときでもあって。そこでの交流をきっかけにデザインを学びたいという想いが大きくなり、当初働いていた会社を辞めてデザイン学校に通い始めました。またマスターのカフェが非常に魅力的な空間だったもので、コーヒーとの出会いもそこからでした。

―LUCKANDはコーヒーのみならず内装も素敵ですよね。特にこだわりのポイントはどこでしょうか。

カトー

入口のドアですかね。このドアには想いが詰まっているんです。もともとLUCKANDは、あるバンドのアートワークを手がけているクリエイターの世界観を形にした小さなアートギャラリーとして2010年に誕生しました。ですが2011年に震災が起こって移転を余儀なくされて。そのタイミングでご縁があって、元々ラッカのインテリアを買っていたインテリアショップのオーナーから今の場所を譲り受けることになりました。その際、当初アイコンにしていた特徴のあるドアをそのまま今の場所に移設しているんです。また現在の電飾看板は、インテリアショップのオーナーから意思を引き継いだものなんですよ。想いとモノを継承するマインドは既にここから始まっていました。

―そして2016年よりフリーマガジンの発行が始まりましたね。

カトー

普段インタビューや対談をした方は世の中に名前が出ているし十分に生計も立っているかもしれないけど、有名でない工場や職人さんにはどうしてもスポットが当たらない。たくさんこだわっていいものを作っているのに世の中には伝わってないし、なんなら後継者不足で廃業に追いこまれているケースもある。という現状を目にし、当時ラッカでプロダクトデザインに関わりながら悶々としていた時期があったんです。そこから「創作者を照らすものを作ろう」という気持ちに繋がっていき、アーティストファーストであることは揺るがないけど、想いのうえでは現場ファーストでやっていこう。我々の生業は工場や職人さんに支えられているのだから、今度は自分たちが現場に恩を返していこう。そうして生まれたのが、フリーマガジンの『LUCKAND』なんです。

―沢山の思い出が詰まった場所ですが、その中でも記憶に残っているエピソードがありましたら教えてください。

カトー

過去に一度だけLUCKANDのケータリングをしたんですが、そのエピソードが面白くて。よくお店に来てくださっていた常連の方がいらっしゃったんですけど、ある日その方からケータリングの依頼が来て。それでいただいた名刺を見たらANREALAGEの森永さんだったんです。僕自身は前々から気にかけていたところにこの依頼が来たので驚いて。とても良い思い出です。

―それは奇跡的なご縁ですね。

カトー

更にそこで面白かったのが、その先にカメラが入るのでLUCKANDの店先でカメラが入った取材をさせてもらっていいですか、という連絡があったので承諾したら、まさかの情熱大陸の撮影で(笑)森永さんがパリコレに行くのを追っていく、という。びっくりしたと共にこの場所を選んでくれたことが凄く嬉しくて。印象的な出来事でしたね。

―LUCKANDは2/12で活動休止となりますが、今後についてビジョンはあるのでしょうか。

カトー

まず、元々フリーマガジンは美大や専門学校等で配布していたんですけど、実は今後更にアップデートさせてより広く深く届けていけるように、ちゃんとした読み物として世の中に流通しようと考えています。LUCKANDのマインドを引き継ぎつつ新しい形で発行しようと思っていますが、Spirit by LUCKANDはここに残ります。それと共にこのギャラリー空間も新たなカタチを構想していますね。

―今後の活動についても既に明確なビジョンがあるんですね。

カトー

そうですね。そのビジョンを達成するためには、ある程度一回壊して、更に積み上げていく作業をしていった方が、広がりやすいという考えを持っていて。基本的にマインドは常に変わらず、そういった形で次のフェーズに思い切って走り出したく、自分の中で一つ区切りをつけるために活動休止に踏み切りました。

―最後にカトーさんにとってLUCKANDとはどのような存在ですか。

カトー

好きなものがたくさん詰まった『宝箱』かな。自分にとっては、働いているスタッフ、出会うクリエイターやお客さんもすべてが”宝モノ”、みたいな。

INTERVIEW&REPORT:坂井彩花、ayu
PHOTO:LUCKAND 編集部

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